今回も、元税務調査官による税務調査に関するお話です。
前回は、質疑応答方式でしたが、今回は実際にあった税務調査の事例をご紹介させていただきます!
このような税務調査方法によって、隠していたものがバレてしまったよって内容です。
(もちろん、少し内容は変えさせて頂いています)
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◇ 銀行調査でバレタ事例 ◇ 反面調査でバレタ事例 ◇ 税務署の職制 |
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銀行調査でバレタ事例
製造業を営む㈱A社は設立して20年以上の会社で、社長のBさんは現場と営業活動を中心に日常業務を行い、経理は経理歴10年以上のベテランのCさんが担当していました。Cさんは几帳面な性格で、完璧な経理処理を行っていました。
ある日のことです。Bさんは、古くからの友人のDさんから頼みごとをされました。工場から少し離れたところに数年前まで資材置場にしていた会社名義の更地がありましたが、海外に息子息が赴任するので、その期間中、息子の自動車を 更地に駐車させてくれとのことでした。
快く承諾したBさんに対してDさんは駐車代を支払させてくれと申し出して、過去にイベントの還付金を返却する際に知り得たBさんの個人預金口座に月2万円程度、振込むようにしました。
その後
社長のBさんはDさんから駐車代が個人預金口座に振込まれるようになってから1年経過しても、経理のCさんに報告せずに自分のお小遣いとして消費していました。Cさんが更地に自動車が駐車されている事実がわかった時にも、Bさんに質問しましたが、「無料で駐車させている」との嘘の回答をしました。
後日、㈱A社の税務調査が行われ、事前に担当調査官は更地に自動車 が駐車されている事実を把握しており、経理担当のCさんに対して質問調査をしましたが、Cさんは社長のBさんから説明を受けたとおり、「無料で駐車させている」 と回答しました。
担当調査官は、Bさんにも質問調査をしましたが、「無料で駐車させている」と回答したとき、顔色が少し変化したことを見逃しませんでした。
担当調査官は、税務署に戻ってから、統括官(課長級)に復命して指示を 仰いだところ、「銀行調査を実施して㈱A社の主要関係者 の個人預金口座を把握せよ」と指示を受けました。
数日後、銀行調査を実施して駐車代金が振込まれている個人預金口座を把握した担当調査官からBさんは厳しく追及されともに、Dさんに対しても反面調査が行われ、駐車代の金額が月2万円程度の少額だったので、つい出来心でお小遣いとして消費した事実を認めました。
その結果
当然のことですが、追徴税額部分は重加算税(本税の35%) となり、友人のDさん及び経理担当のCさんにも迷惑をかけてしまいました。
どうすればよかったのか
社長のBさんは、経理担当のCさんに報告するとともに個人預金口座に入金された駐車代を出金して会社に入金処理すべきでした。また、友人のDさんに対して、駐車代金を法人預金口座名義に振込ように依頼すべきでした。経理担当のCさんが完璧な経理処理を行っていただけに、非常に残念な結果になりました。脱法行為は、必ず発覚して損をします。
調査官は、あらゆる調査手法を用いて解明します!!
反面調査でバレタ事例
卸売業を営む㈱E社は、業績も好調であり今年の5月に事務所兼倉庫の壁の修繕塗装を行いました。
7月になり、社長のFさんは古くなった自宅の壁の修繕塗装を行うこととしましたが、今まで真面目に生きてきたFさんの脳裏に、ふと悪知恵が浮かびました。
今期は、かなり会社の利益が発生しそうなので、自宅の壁の修繕塗装費を会社の経費で落とすことによって、法人税等の納税額を減額しようと・・・・・・・・・・・
Fさんの手口は、自宅の壁の修繕塗装費を5月に行った事務所兼倉庫の壁の修繕塗装の追加工事に仮装することでした。
自宅の修繕塗装を行った㈱G社から交付があった「見積書」及び「請求書」には、自宅の工事を行っていることが明確に記載されているため、会社経費としての証拠書類にはせず、「領収証」の但し書欄が空欄であることに着目して、Fさんは、但し書欄に「事務所倉庫壁面の修繕塗装」と記入(改竄)しました。
税務調査当日
担当調査官は、準備調査の段階でFさんの自宅の外観を確認しており、「自宅の壁の修繕塗装費を会社の経費に付け込んでいないか?」を調査ポイントにしていました。
調査官は「事務所兼倉庫の壁の追加塗装工事」について証拠書類が領収証しかなく、領収証の但し書きの筆跡にも疑問を感じ、Fさんに対して追加修繕塗装箇所を中心に質問調査を行いましたが、曖昧な回答しか得られなかったので、修繕塗装を行った㈱G社に対して反面調査を行うこととして、上司の統括官の了解を得ました。
調査官が、㈱G社に対して反面調査を行った結果、Fさんが自宅の修繕塗装費を㈱E社の経費に仮装して計上していた事実が明らかになってしまいました。
その結果
当然のことですが、追徴税額部分は重加算税(本税の35%)対象となり、㈱C社にも迷惑をかけました。
税務署の職制
税務署は敵ってわけではないのですが、税務調査に入られる側にとってはやはり敵と認識してしまいますよね!
敵の組織を知るってことは、敵を攻略するのに役立つ可能性もあるので、税務署の職制についてご紹介させていただきます。
税務署の職制(調査担当部門)
< 調査担当部門 > <特別国税調査官>
統括国税調査官 特別国税調査官
上席国税調査官 上席国税調査官
国税調査官 特別国税調査官は規模の大きい法人の調査を担当。
事務官
<職制について>
◇ 統括国税調査官
税務署の課長級 調査法人の選定、調査担当者の復命管理
※税務調査折衝の窓口責任者
年齢幅は40代前半~60歳前後
◇ 上席国税調査官
税務署の係長級 調査担当者で若手職員の指導にも当たる。
※困難調査事案を担当したりもする。
年齢は35歳前後~60歳前後
◇ 国税調査官
税務署の主任級 調査担当者
※年齢は20代後半~30代後半
◇ 事務官
税務署の一般職員 調査担当者
※ 年齢は20歳前後~30歳前後
◇ 特別国税調査官
税務署の副署長・課長級 税務署所管の中で規模の大きい法人の調査を担当
税務調査をきっかけに顧問税理士を変更した事例