今年も残すところ約1か月となりました。
フリーランス(個人事業主)が節税のために「年内に」行うべきことを5つにまとめてご紹介します。
今回の記事は、FirstStepの居村が担当します。
【年内にしなあかんこと】
- 消費税の届出~課税事業者の選択~
- 消費税の届出~簡易課税制度の選択~
- 小規模企業共済の年払い
- 控除証明の保存
- 利益の見積もりと対策
【おまけ:3/15までにしなあかんこと】
- 青色申告の申請
- 減価償却~定率法選択
年内にしなあかんこと
届出などは種類により、事業年度の開始までに提出しないと有効にならないものがあります。
そのほか年内に行っておかないと今年度分に適用できないものがあるので紹介いたします。
1.消費税の届出~課税事業者の選択~
消費税は2年前の課税売上高が1,000万円を超えるとかかります。例えば、平成25年の課税売上高が1,000万1円ですと、平成27年は消費税の課税事業者になります。逆に、2年前(平成25年)の課税売上高が1,000万円以下の場合は、平成27年は消費税免税事業者です。
※特定期間については割愛させていただきます。
しかし、あえて課税事業者を選ぶことができます。
課税事業者になることで、消費税が還付される場合があります。
なぜなら消費税の納付額の計算方法は
預かった消費税(売上にかかる消費税)-払った消費税(経費にかかった消費税)=納める消費税
ですので
預かった消費税<払った消費税 の場合、納める消費税はマイナスになります。
マイナス、すなわち払った消費税のほうが多いのでその分が還付されます。
例えば、次のようなケースの場合、払った消費税の方が多くなる可能性があり還付されるかもしれません。
- 翌年課税期間に多額の設備投資の計画がある
- 輸出取引を行っている、開始する
- 大規模修繕の計画がある
- 業種・業態の変更があり、そのため多額の支出が予想される
- 在庫の増大など多額の仕入れ、経費の支出が見込まれる
消費税の仕組み等については
FirstStep関連会社 中央会計ブログ
「知らんと損!消費税の仕組み『免税・課税』『本則・簡易』の違い」もご覧下さい。
課税事業者を選択する場合は、年内に
「消費税課税事業者選択届出書」
を管轄の税務署に提出する必要があります。
ただし、一度選択すると2年間は強制適用となりますのでしっかりシュミレーションしてからにしましょう。また、還付されるためには、消費税の計算方法は、「本則」である必要があるので、次項で紹介する「2.消費税の届出~簡易課税選択~」は、提出しないで下さい。
2.消費税の届出~簡易課税制度の選択~
消費税の計算方法は「本則」「簡易」の2種類があり、通常「本則」で計算します。
しかし、基準期間(前々年)の課税売上高が5,000万円以下の場合は、「簡易」を選択することができます。
消費税の納付額の計算方法は先述したとおり「本則」では
預かった消費税(売上にかかる消費税)-払った消費税(経費にかかった消費税)=納める消費税ですが、「簡易」の場合は、業種によってみなし仕入率が決められております。
「簡易」の場合の消費税額の計算は以下のようになります。
売上にかかる消費税-売上にかかる消費税×みなし仕入率=納める消費税額
消費税を税務署に納める金額は「本則」か「簡易」かによって金額が変わってきます。
例えば、以下のような事業者の場合に消費税の納税額がいくらになるか計算してみます。
- 課税売上10,800千円(税込)
- 仕入6,480千円(税込)
- 小売業(みなし仕入率80%)
とすると、
本則:800千円 - 480千円 = 320千円
簡易:800千円 - 640千円 = 160千円
160千円 < 320千円
となりますので簡易の方が納税額が少なくなります。
ただし、こちらも2年間強制適用ですので、しっかりシュミレーションして有利なほうを選択しましょう。
簡易課税を選択する場合には、
年内に「消費税簡易課税制度選択届出書」
を管轄の税務署に提出する必要があります。
3.小規模企業共済の年払い
小規模企業共済は、その年度に払い込んだ掛金の全額がその年の所得控除になります。
ですので、月々払っている方は、年末に来年分も払うと、1~11月+12月~翌年11月までの合計23ヵ月分の所得控除が受けることができます。
まだ加入していない方も振込と同時に加入することができますので、今なら間に合います。
ただし、年末の銀行営業日と申込締切日にはご注意下さい。
小規模企業共済の制度については
「確定申告で知らんと損する!所得控除(小規模・確定拠出金)まとめ」もご参照ください。
4.控除証明書の保存
会社に勤めているときはこの時期になると、経理部に生命保険や住宅ローンの控除証明書などを提出するだけで、会社が年末調整をしてくれて所得税がかえってきて、というのが当たり前だったと思います。
個人事業主となったからには全て自分でしなければいけません!!
平成26年分確定申告を行うのは平成27年2月16日(月)以降になりますが、控除証明書は11月ごろから送付されてきますので証明書はきちんと保管し、確定申告に備えましょう。
紛失してしまったものなどがある場合は再度取り寄せておきましょう。
控除証明書一例
- 国民年金(基金)控除証明書・・・送付されます。
- 生命保険料及び損害(地震)保険料の控除証明書・・・保険会社等から送付されます。
- 小規模企業共済掛金証明書・・・共済から送付されます。
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書・・・住宅ローンを組んだ金融機関から送付されます。
- 寄付金・・・寄付団体から証明書を発行してもらいましょう。
- 医療費・・・医療機関で交付された領収書を集計しましょう。
※国民健康保険等は控除証明書がありません。その年の1月1日~12月31日までに支払った金額を記載することで控除の対象となります。
5.利益の見積もりと対策
「確定申告は3月15日(平成27年は3月16日(月))だから、まだまだ余裕~♪」と思っていては予想以上の所得税、消費税の納付額になるおそれがあります。
年内に提出する必要がある上記の届出や支払いを検討するためにも早急に今年1月1日~の売上・経費を集計し、利益を見積もりましょう。
来年買うつもりの備品があれば今年中に購入することで経費に含められます。
ただし、車や機械などで30万円以上のものの場合は減価償却することになり、支払った金額の一部しかその年の必要経費にできない場合があるので注意してください。
逆に30万円未満であれば一括で必要経費として処理することができます。(年間300万円まで)
※白色申告者の場合は10万円以上で減価償却資産となりますのでご注意ください。
在庫も確認し、廃棄するものがあれば、廃棄しましょう。
おまけ:3/15までにしなあかんこと
年内でなくても3/15までに行うことで間に合うものもあるので紹介いたします。
1.青色申告の承認申請手続き
事業所得、不動産所得又は山林所得がある方は、青色申告をすることで65万円または10万円の特別控除が受けられます。
平成26年は承認申請書を提出してなくて白色申告になってしまったという方でも、平成27年3月15日(土日のため16日)までに提出すれば平成27年は青色申告をすることができます。
ただし、青色申告には帳簿の備え付けなど要件がありますので、あわせてこちらの記事もご覧ください。
「個人事業で起業するなら出さんと損する青色申告承認申請書!」
2.減価償却の方法~定率法選択~
機械や車など事業に必要な固定資産を購入しても、その全額が買った年度の必要経費にできるわけではありません。
減価償却費という名目で数年にわたって経費にしていきます。
この減価償却には計算方法が「定額法」と「定率法」の2種類があります。
定額法は、文字通り、定額を経費にします。
月数按分はしますが、毎年同じ額が経費になります。
個人事業主の減価償却方法は原則この定額法です。
一方、定率法は、
決めれられている償却率を使って
未償却残高×償却率=減価償却費になります。
よくわかりにくいかもしれませんが、最初の年度の減価償却費が一番多くなり、2年目以降は減価償却費が小さくなっていきます。
早期に経費化したい場合は定率法を選択してください。
ですので、平成27年に機械や車などの固定資産を買う予定があり、節税をしたいという場合は定率法を選択した方が有利です。
定率法を選ぶためには、
「所得税の減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」
を平成27年3月16日(15日が土日のため)までに提出する必要があります。
ただし、3年間の継続適用ですので、注意が必要です。
今回の記事は以上になります。
あわせて「会社員からフリーランスになったときに気をつけるべき6つのこと」もご覧ください。