会社員を辞めてフリーランス(個人事業主)になったときに、気をつけなければならないことはありますか?」という質問を受けることがあります。

そこで今回は、会社員を辞めフリーランスになったときに、まず気をつけるべき6つのことをまとめました。

  1. 退職時に源泉徴収票をもらう!
  2. 健康保険を任意継続するのが得か?国民健康保険に切り替える方が得か?を考える!
  3. 住民税は、去年の収入をベースに計算される!
  4. 有利になる届出は必ず提出する!
  5. ケガをしても失業しても公的な保障はない!
  6. 白色申告も記帳・帳簿保存は必要!(26年1月~)
  7. フリーランスになったときに気を付けるべき6つのこと まとめ

 

1.退職時に源泉徴収票をもらう!

まず、会社を辞めるときには会社から源泉徴収票をもらいましょう。
源泉徴収票とは、今年辞めるまでにその会社からもらったお給料の総額・控除されている所得税、社会保険料の総額が記載されているA4の1/4サイズの書類です。

たまに、辞めた会社が源泉徴収票を発行してくれない、という話を聞きます。
しかし、これは法律違反であり会社には退職日から1ヶ月以内に源泉徴収票を発行する義務があります。
どうしても発行してもらえない場合は、給与明細などで代用することも可能ですが、その場合には届出が必要になりますので注意してください。

参考:源泉徴収票不交付の届出手続

 

2.健康保険を任意継続するのが得か?国民健康保険に切り替える方が得か?を考える!

会社員のときは、通常、勤務先の健康保険に加入し健康保険証をもらっています。
しかし、会社員を退職しフリーランスになると、健康保険から国民健康保険に切り替えるか、もしくは、健康保険をそのまま継続(任意継続)するかを選択しなければなりません。
それぞれで計算方法が違うので、シミュレーションをして得する方を選択しましょう。

例えば、30代で会社を辞め、フリーランスになられるAさんの場合。

  • 年収480万円(月収40万円)
    ※平成25年も平成26年も同じ
  • 奥様は専業主婦
  • お子さん1人
  • 大阪市在住

国民健康保険を選択する場合

国民健康保険料は、各市町村で異なっています。
各市町村の国民健康保険の窓口で確認するか、各市町村のホームページに載っている計算方法で計算することが可能です。
市町村によっては、ホームページ上で国民健康保険料をシュミレーションできる市町村もあるので活用しましょう。

参考:大阪市 国民健康保険料の計算方法等

参考:東京都福祉保健局 保険料額について

平成25年の年収が480万円で奥さん・お子さん1人いるAさんの場合、1ヶ月当たりの保険料が約37,000円になります。

任意継続を選択する場合

まずは、勤務先の健康保険の種類を確認します。
健康保険証の保険者名称に「全国健康保険協会」と書かれている場合は、退職前の月収で下記の表から計算します。
※厳密には、月収ではなく「標準報酬月額」で計算します。

参考:全国健康保険協会 平成26年度保険料額表

月収が40万円のAさんの場合、1ヶ月当たりの保険料が28,168円となります。

Aさんの場合でしたら、任意継続を選択した方が保険料が安くなることになります。

※健康保険証の保険者名称に〇〇保険組合と書かれている場合は、各健康保険組合に保険料を確認してください。
また、任意継続をするには、退職日の翌日から20日以内に手続きをしなければならないので注意してください。

 

3.住民税は、去年の収入をベースに計算される!

よく退職した翌年の住民税の金額をみて、なぜフリーランスになって収入が下がったのに住民税は同じなの?という質問を受けます。
住民税は、前年の収入の金額をベースに計算され毎年6月で改訂されます。

例えば、平成26年に退職した場合、平成27年6月に改訂される住民税は平成26年の収入をベースに計算されることになります。
つまり、退職前の収入で計算した住民税の請求が、退職後に来ます。

住民税の支払いも予定しておきましょう。

 

4.有利になる届出は必ず提出する!

会社員を辞めてフリーランスになった場合は、税務署等に様々な届出を出さなければなりません。
届出といっても、必ず出さないといけないもの、出さなくてもいいけど出さないと損してしまうものがあります。

個人事業の開業届出書

会社員を辞めフリーランスとして活動しだしたら必ず出さないといけない届出になります。
始めた事業の概要や氏名・自宅の住所・事務所の住所などを記載して提出します。

  • 提出先  管轄の税務署
  • 提出期限 事業を開始してから1ヶ月以内

参考:個人事業の開業届出・廃業届出等手続

所得税の青色申告承認申請書

青色申告・白色申告という言葉を聞いたことがあると思います。
この申請書を提出すると青色申告をすることができ、様々なメリットを受けることができるようになります。

  • 青色申告特別控除を受けれる

青色申告で、複式簿記で帳簿を記載し貸借対照表と損益計算書を作成する場合は65万円の控除を受けることができます。
また、そこまでの帳簿を作成していなくても、10万円の控除を受けることができます。

  • 一括で経費に落とせる上限が30万円になる。

白色申告の場合、10万円以上のパソコンなどの購入費は一括で経費に落とすことができません。
数年間(パソコンは4年間)に分けて少しずつ経費としていきます。(減価償却)
青色申告の場合は、この10万円のラインが30万円に引き上げられます。
25万円のパソコンを購入したとしても一括で経費に計上することができます。
※この特例を受けることができるのはその年に購入して使用を開始した減価償却資産のうち、その合計金額が300万円に達するまでのものになります。
 また、事業を開始したのが年の途中で事業年度月数が1年に満たない場合は、300万円を12で割って月数をかけた金額が上限となります。

  • 青色事業専従者給与が出せる。

専従者とは、同じ生計で生活をしている奥さんや親族で事業を手伝ってくれている人を言います。
本来、このような人にお給料を支払ったとしても経費にすることはできませんが、青色申告の場合、一定の要件を満たすと経費にすることができます。
※ただし事前に届出が必要ですので注意してください。
また必要経費として認められるためには専ら(もっぱら)この事業に専従していないといけないのでその方が別のところで働いていたりすると必要経費として認められない可能性がありますので注意してください。

  • 損失を3年間繰越せる。

確定申告をして損失(マイナス)が出た場合に、その損失を翌年以降3年間繰越すことができます。
その間に所得(儲け)が出た場合に、その損失分と相殺することができ税金の負担を減らすことができます。

  • 貸倒引当金の設定ができる。

貸倒引当金とは、売掛金など商品やサービスは提供したけど、まだ回収できてない債権に対する将来の回収不能見込額のことをいいます。
青色申告の場合、12/31時点の売掛金等の債権額の5.5%を回収不能見込額として経費として計上することができます。
※金融業の場合は、3.3%になります。

  • 提出先  管轄の税務署
  • 提出期限 青色申告をしようとする年の3/15まで
         (その年の1/16以後に開業する場合は、開業した日から2ヶ月以内)

参考:所得税の青色申告承認申請手続

青色事業専従者給与に関する届出書

青色申告のメリットの中でもご説明しましたが、同じ生計で生活をしている奥さんなどの親族に給料を支払ったとしても経費として認められません。
ただし、一定の要件を満たす場合には、この届出を出すことによって経費として認められるようになります。

  • 提出先  管轄の税務署
  • 提出期限 青色事業専従者給与額を経費に入れようとする年の3/15まで
         (その年の1/16以後に開業した場合や途中で専従者がいることとなった
         場合は、開業した日または途中で専従者がいることとなった日から2ヶ月以内)

参考:青色事業専従者給与に関する届出手続

減価償却資産の償却方法の届出書

青色申告の場合、先ほども説明したましたが30万円未満の資産の購入費は一括で経費にすることができます。
ただし、30万円を超える資産を購入した場合は数年間にわたって少しずつ経費にしていきます。
これを減価償却といい、その対象の資産のことを減価償却資産といいます。
減価償却の計算方法には、定額法と定率法の2つあります。

  • 定額法
    毎年、同じ金額を減価償却していく方法です。
    費用を均等に各年度に配分していきます。

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  • 定率法
    毎年、一定の割合ずつ減価償却を少なくしていく方法です。
    資産の価値は年々落ちていくという考え方で、1年目が一番減価償却が大きくなります。

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届出を出さないと強制的に定額法で減価償却を計算することになります。
つまり、毎年同じ金額を減価償却していきます。
1年目からできるだけ多く減価償却したい場合は、届出を出して定率法を選択しなければなりません。

参考:所得税の減価償却資産の償却資産の届出手続

個人事業開始届

※都道府県により名称が異なります。

フリーランスになると税務署だけではなく、都道府県にも届出が必要です。
各都道府県に都道府県税事務所という地方税を管理する事務所があります。
この都道府県税事務所にも、届出が必要になります。
ほとんどの都道府県のホームページよりダウンロードできます。

  • 提出先  各都道府県税事務所

参考:大阪府 個人の事業開始等の申告

参考:東京都主税局 事業開始等申告書

 

5.ケガをしても失業しても公的な保障はない!

会社員時代は、もし仕事中にケガをしたとしても治療費が労災保険を使って保証されます。また、失業したとしてもハローワークで手続きをすると失業保険がもらえます。フリーランスになると、労災保険にも雇用保険にも加入できません。

このように会社員時代に当然にあった保障が、フリーランスになるとなくなります。この点も必ず理解しておきましょう。

 

6.白色申告も記帳・帳簿保存は必要!(26年1月~)

フリーランスだから白色申告だと帳簿は保存しなくてもいいんですよね?という質問を受けることがあります。平成26年より白色申告であっても全ての方に、記帳と帳簿書類の保存が義務づけられました。知らずに帳簿を保存せずにいると、税務調査が入ったときに大変なことになります。

今回の改正により、白色申告の方も青色申告にすることで様々な特典を受けていく方がメリットがあるようになりましたので注意してください。

 

まとめ

会社員を辞めてフリーランスになると、今まで会社がしてくれていたこともすべて自分自身でやらなければなりません。税金や年金・健康保険など様々な知識を持っていないと知らなかったではすまされないこともあります。

今回ご紹介した内容は、まずフリーランスになって最初に確認しておかないといけないことばかりです。フリーランスになる予定の方、今年フリーランスになられる方は必ず確認しておきましょう。

今回の記事は、FirstStepの辛島が担当いたしました。