アベノミクスや日銀の金融緩和の意向等を受けて、日本経済に対する期待が高まっている今日この頃、 景気の判断材料ともされる賞与にも注目が集まっているのではないでしょうか。
私のお客様から「頑張ってくれている従業員さんに賞与を払ってあげたい!」というお話もよく聞きます。
では、実際に賞与を支給する時、どのように社会保険料や源泉所得税を控除すればよいのでしょうか。毎月の給与とは計算方法が違いますので、賞与の正しい計算方法について書かせていただきます。なお、今回の記事はFirstStepの元村が担当いたします。
- 賞与とは?
- 賞与に対する社会保険料
- 賞与に対する雇用保険料
- 賞与に対する源泉徴収税額
1.賞与とは?
みなさん、賞与と聞くと「夏のボーナス」、「冬のボーナス」を連想されるのではないでしょうか。 実際には、国税庁のHPで以下のように賞与の定義がされており、一般的な賞与のイメージより範囲が広いことになります。
賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏季手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するものをいいます。 なお、給与等が賞与の性質を有するかどうか明らかでない場合、次のようなものは賞与に該当するものとされます。
1.純益を基準として支給されるもの
2.あらかじめ支給額又は支給基準の定めのないもの
3.あらかじめ支給額の定めのないもの。雇用契約そのものが臨時である場合のものを除く。
4.法人税法第34条第1項第2号≪事前確定届出給与≫に規定する給与
5.法人税法第34条第1項第3号に規定する利益連動給与
※4、5は法人の役員さんに対する賞与について書いてあり、役員さんに対する賞与は注意が必要です。
2.賞与に対する社会保険料の計算
まずは賞与に係る社会保険料についてみていきます。
社会保険料は健康保険料(介護保険料含む)と厚生年金保険料から成ります。それぞれの控除する保険料は、賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額(標準賞与額)に「保険料率」を乗じた額となります。
下記の例で見てみます。
【例】大阪府にあるA社は、平成25年4月、一生懸命働いてくれる営業職Bさん(35歳)に賞与20万円を支払いたいと考えています。その場合の社会保険料の控除額は以下の通りです。
例の条件を上記の保険料率表に当てはめると以下のようになります。
(1)〈健康保険料〉200,000×10.06%×1/2=10,060
(2)〈厚生年金保険料〉200,000×16.766%×1/2=16,766
(1)+(2)=26,826
よって、控除する社会保険料は26,826円となります。
賞与を支払うときは、支給日より5日以内に「賞与支払届」を年金事務所に届け出て下さいね。
3.賞与に対する雇用保険料の計算
雇用保険に加入している方は雇用保険も控除しなければなりません。
こちらは毎月の給与から控除するのと同じように控除します。
【例】Bさんの雇用保険料の控除額は以下の通りです。
200,000×5/1000(※一般の事業)=1,000
雇用保険料は1,000円となります。
※事業の種類によって保険料率が変化します。
4.賞与に対する源泉所得税額の計算
最後に所得税の計算をします。
なぜ最後かというと、社会保険料等の金額がでないと源泉所得税の計算ができないからです。必ず社会保険料、雇用保険料の計算の後に行いましょう。
(1)前月の給与から社会保険料等を差し引きます。
(2)上記(1)の金額と扶養親族等の数を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて税率(賞与の金額に乗ずべき率)を求めます。
(3)賞与から社会保険料を差し引いた金額×上記(2)の税率 この金額が賞与から源泉徴収する税額になります。
※前月に給与の支払いがない場合等は、取扱いが異なります。「こちら」をご確認下さい。
【例】Bさんの前月のお給料は30万円でした。Bさんは独身で扶養親族はいません。
その場合の源泉徴収税額は以下の通りになります。
(1)300,000-(15,090+25,149+1,500)=258,261
(2)賞与の金額に乗ずべき率は6.126%
(3){200,000-(10,060+16,766+1,000)}×6.126%=10,547
賞与から控除する源泉徴収税額は10,547円です。
よって、Bさんの賞与の手取額は200,000-(26,826+1,000+10,547)=161,627円となります。
これらの金額を給与明細に記載して従業員さんに渡して下さい。
通常の給与明細の作成方法は前回の記事「給与明細テンプレート!誰でも簡単に給与明細が作れるで」をご参考にしてください。
5.正しい額を正しい計算方法で
最後に、決算で利益がでた時に決算賞与を支給する会社もあります。
理由はそれぞれ、1年がんばった従業員に対する報奨であったり、節税対策であったりなどだと思います。
決算賞与に対する要件や注意点などを以前記事「決算賞与で節税はダメ?決算賞与の支給要件!」にしましたのでこちらも合わせて紹介させていただきます。
正しい額を正しい計算方法で支給することをお勧めします。
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