今回の記事は、税理士法人中央会計からの出稿です。居村が担当させていただきます 😉
ゴールデンウィークのウキウキ気分もふき飛ぶ税務調査についてです!
スペシャルゲストとして、元税務調査官で弊社税理士の前原に、質問していきたいと思います!
元税務調査官 前原
25年間大阪国税局で勤務し、20年以上法人税と消費税の調査を行ってきた税務調査のスペシャリスト。昨年から税理士法人中央会計の仲間になって頂きました。
KDDIと中央会計のコラボ「経理通信」でも元調査官が語るという税務調査に関するコラムを執筆してるのでそちらもお読みいただけると税務調査について詳しく知ることが出来ます!
◆ 目 次 ◆ 1.税務署という組織は怖いよ! |
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1.税務署という組織は怖いよ!
「まず税務調査の前に、税務署という組織について教えていただけますか?」
「税務署は、全国展開している国税庁という大組織の中の1支店なのです。」
「その怖さとは・・・とんでもないほどの情報収集能力を持っていることです。
会社や個人事業者の場合、事業をするうえで、取引先と取引していますが、取引先も税務申告をしたり、税務調査を受けたりしています。その際に取引内容を資料化して、納税者ごとに蓄積しています。
税務署や上部組織の国税局には、資料収集担当が配置されており、金融機関において納税者の預金状況を資料化(会社の場合は代表者及びその家族、主な従業員を含む)したり、有効な資料収集ができると想定される会社には、税務調査時に資料収集担当が同行することによって有効な資料収集を行っています。
また、インターネット取引にも目を光らせており、他官庁との連携も含めて、あらゆる方法で資料収集を行っています。調査官があなたの会社に税務調査に来るときは、あなたの会社に関する情報を携えていることをお忘れなく・・・・・・・・・」
「法人の預金通帳だけでなく、代表者個人やその親族、スタッフの預金まで見られることがあるんですね!恐い・・・
お話できる範囲で結構ですので、具体的な事案ありますか?」
「衣料品関係の卸売業を営むA社の社長Bさんには、ある秘密がありました。
遠方のC社との取引を会社の経理を通さずに、Bさんの個人預金口座上で行っていました。仕入先から商品を仕入れてC社に直送する取引ですが、仕入商品の支払いをBさんの個人預金口座で行うとともに、C社からの売上代金はBさんの個人預金口座に入金されることで、利益部分はBさんの私的なお小遣いとして消費していました。
仕入れも会社の経理を通さない簿外取引なので、税務署にはバレないだろうと鷹をくくっていました。
時が過ぎBさんの知らないところで大きな動きがありました。C社に税務調査が入ったのです!
その時の調査官は、A社に対する支払いを社長Bさん名義の預金口座振込まれている事実に疑問に思い資料情報を作成して、A社を所轄している税務署に送付しました。資料情報を受け取った所轄税務署はA社を税務調査対象先に選定しました。
やがて税務調査が実施されましたが、簿外取引による売上除外が想定されるとあってか、調査官の追及も厳しく、簿外取引を行っているBさん名義の預金口座のある銀行だけではなく、C社にも反面調査が実施されて、簿外取引のすべてがバレてしまいました。
当然のことですが、追徴税額部分は重加算税(本税の35%)対象となり、取引先のC社にも迷惑をかけてしまいました。」
「怖いですね!取引先に税務調査 → 自社に税務調査と恐怖の連鎖ですね 😯 」
「法人を設立した場合、税務署に届出書を提出しなければ、税務署に会社の存在さえバレないのか?と考える方もいらっしゃるようですが、とんでもない!税務署は法務局などで法人の設立情報を把握しています!設立届出書を税務署に提出しないことは、青色承認申請書などの特典を受けるための書類も提出できないというリスクを背負うことになります。」
「弊社関連会社FirstStepで設立された方にも、ぜひ注意していただきたいポイントですね。」
2.税務署の人って急に来るの?
「さっそくですが、税務調査って、映画『マルサの女』みたいに怖い調査官が突然来る!っていうイメージを持たれている方が多いようですが、実際はどうなのでしょうか?」
「税務調査には、強制調査と任意調査があります。マルサが来るのは強制調査のことで脱税額が1億円を超えると見込まれて、かつ、悪質なものに限られていますので、一般的には、任意調査です。
この場合、まず税務署から顧問税理士に電話があります。
税理士法第33条の2書面添付をしていれば、税理士が税務署に出向いて説明する『意見陳述』だけで済むこともあります。書面添付をしていない場合は、日程調整のうえ、会社に税務調査官が来ることになります。」
「はい。事前準備ができるように、余裕をもって日を決めた方がいいです。」
「なるほど。調査前に会社側も事前準備が必要なんですね。事前準備については、のちほど詳しく教えていただくとして、そもそも『なんで、うちの会社が目つけられたんや?!』って思ってしまうんですが、、、」
「調査対象を選定するのは、担当統括官(課長級)です。何らかの理由、異常計数があるかどうか、過去5年分の予習(準備調査)をしてから調査の通知をしています。
具体的には
・申告書の見直し作業
・申告状況の推移の検討
・異常計数の抽出作業
・過去の調査状況
・資料情報のチェック
・取引先の状況
・外観調査(現金商売等は内偵調査)
・代表者の個人申告状況の確認(自宅の外観調査を行うケースもあります。)
概ね以上のようなことです。
調査官は、必ず準備調査資料を担当統括官に提出して、指示を仰ぎます。」
3.税務調査の準備はどうしたらいいの?
「では、会社側は、税務調査の日までに何を準備しておいたらいいのでしょうか?」
①日々の取引の流れを、説明できるようにしましょう。
誤解を招いて税務調査が長引かないようにするための予防策です。
②イレギュラーな取引こそ、説明できるようにしましょう。
これも税務調査が長引かないための予防策です。
反面調査が実施されないためにも重要です。
③売上や棚卸商品などの主な勘定科目の期末計上を、チェックしましょう。
必ず期末計上は見られます。
④代表者の個人的費用と勘違いされやすい支出を、説明できるようにしましょう。
グレーゾーンを明白にし、否認されないための予防策です。
⑤過去の調査での修正事項及び指導事項を、チェックしましょう。
調査官にとっては、調査重要項目です。
⑥現金残と現金出納帳の残高は、必ず合わせましょう。
現金監査も、調査重要項目です。
⑦机の上、机の中、金庫、書類棚は、整理整頓を心がけましょう。
確認調査が行われるケースがあります。
⑧調査時の電話及び来客等の応対は、慎重にしましょう。
⑨調査官との会話は目をそらさないようにしましょう。
特に、③と⑥は否認しやすい項目ですので、要注意です。
説明力が大事ですので、当日までにしっかり準備しましょう。」
「事前準備がとても大切なんですね。お話にあった反面調査ってどういうものなのでしょうか?」
「反面調査とは、調査先のみでは事実関係の確認が困難な場合、調査官が、取引先や銀行に臨場して、事実確認を行う調査のことです。」
「そうですね。反面調査を行われた取引先には、時間も含めて迷惑をかけてしまいます。信用問題にも関わることもあります。予防策は、イレギュラーな取引など調査官に不審に思われる可能性の取引については、あらかじめ説明しやすいように整理し、経理処理を確実に行うことです。」
4.税務調査の当日はどうしたらいいの?
「税務調査は、2~3日間行われます。時間は、9時過ぎから、お昼休みを挟んで、17時ぐらいまでです。帳簿や資料の調査しますが、社長さんや経理の方と雑談してるようで、実は、帳簿等に記載されていない部分の聴き取り調査を行っています。
趣味、経歴、交友関係の会話は、慎重に、まじめな印象を与えるように注意して下さい。代表者の人柄や性格を細かく観察しています。うっかり余計なことをしゃべると、そこが調査項目となりかねません。」
「雑談も用心しないとダメですね 😯 しかも、お昼休みあるんですね!」
「はい。税務調査官にとっては、昼休みは重要な作戦会議タイムです!午前中の調査内容を整理して、午後からの調査展開を考えます。調査事案によっては、お昼休みに、担当統括官に電話連絡して、調査状況を報告して、指示を仰ぐこともあります。」
「会社側としては、午前中に調査官がどこをポイントとして調査展開しているか確認して、午後からの調査に備えるといいですね。」
5.税務調査官あるある
「調査官も人の子ですからね。調査初日は、緊張してます(笑)まじめな印象の会社さんは、時間をかけても無駄かな、と早めに調査が終了する可能性もあります。逆に、挑発的な態度には燃え上がる調査官もいるのはないでしょうか(笑)あと、本音を言えば、税務調査をして『問題なし』だと焦りますね。」
「税務署の年間スケジュールとしては、7月に人事異動がありますので、異動後、年末まで数字を出せるように頑張ります(笑)もちろん年明け以降も頑張りますよ。4~5月末は、異動までに数字をまとめなければならないので、比較的、重たくない案件の調査になることがあります。」
6.税務調査後はどうなるの?
「必ずではありません。下記のフローチャートで『修正申告』となった場合です。
修正申告書の作成提出(都道府県民税・市町村民税も。)
↓
追加税額の納付(一括納付が原則。納付できない場合は、納税相談。)
↓
付帯税の決定
↓
【加算税】 |
||
過少申告加算税 |
増額した税額×10% |
期限内申告でも税額が少なく、修正申告を提出した場合に課せられる。 |
無申告加算税 |
納付税額×15% |
申告期限を過ぎた場合や、申告書を提出しなかった場合に課せられる。 |
不納付加算税 |
納付税額×10% |
源泉徴収税額を納期限に納めなかった場合に課せられる。 |
重加算税
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悪質な仮装・隠蔽により税金逃れをした場合、上記に代えて課される。 |
|
増額した税額×35% |
仮装・隠蔽による過少申告 |
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納付税額×40% |
仮装・隠蔽による期限後申告、無申告 |
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納付税額×35% |
仮装・隠蔽による源泉徴収税額を納期限に納めなかった場合 |
【延滞税】 (地方税は延滞金) |
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未納税額 × 年14.6% × 法定期限の翌日から完納までの日数/365 |
※ 延滞税の計算は詳しくはコチラ
↓
不服がある場合は、決定後に、不服申立をすることができる。
↓
付帯税の納付となります。」