「所得拡大促進税制」とは?
平成25年4月1日以降開始する事業年度に適用できる新しい税制です。
今回は、この新しい税制が起業されたばかりの方にも結構使えるよってことをご紹介させていただきます。今回の記事は、FirstStepの合田が担当です。
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<目次> ■ 所得拡大促進税制とは? ■ 所得拡大促進税制はどうやって計算するの? ■ 起業当初ほど使いやすい? ■ 所得拡大促進税制 最後に |
所得拡大促進税制とは?
まず、制度の内容から確認していきましょう。
「所得拡大促進税制」とは、以下の①、②、③の要件を全て満たした場合、国内雇用者に対する給与等支給増加額について、10%の税額控除(法人税額10%(中小企業等は20%)を限度)を認めるというものです。
要件① 給与等支給額が基準事業年度の給与等支給額と比較して5%以上増加していること
要件② 給与等支給額が前事業年度の給与等支給額を下回らないこと
要件③ 平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回らないこと
※経済産業省HPより
※平成25年4月1日以降に開始した事業年度からの適用になります。
※役員、役員の特殊関係者、使用人兼務役員の給与については「給与等支給額」から除かれますので、注意してください。
【特殊関係者】
①役員の親族
②役員と婚姻の届出を出していないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
③上記①、②以外の者で役員から生計の支援を受けているもの
④上記②、③の者と生計を一にするこれらの者の親族
所得拡大促進税制はどうやって計算するの?
上記の説明を読んでも、すぐにはピンときませんね。実際に、数字を入れて計算してみましょう!
たとえば、
・従業員はずっと1名だけ
・平成24年度(平成24年4月~平成25年3月)のお給料は、月額18万円(年間で216万円)
・平成25年度(平成25年4月~平成26年3月)は月額19万円にアップ(年間228万円)
という会社があったとします。
要件① 給与等支給額が基準事業年度の給与等支給額と比較して5%以上増加していること
「基準事業年度の給与等支給額」とは、平成25年4月1日から始まる事業年度の直前の事業年度、つまり平成24年度の「216万円」になります。平成25年度は、基準事業年度と比べるとお給料が12万円アップ(216万円→228万円)していますので、増加割合を計算してみると、
12万円 ÷ 216万円 ≒ 5.56%
となり、5%以上増加、要件①に該当することとなります。
要件② 給与等支給額が前事業年度の給与等支給額を下回らないこと
216万円→228万円と、前事業年度と比べて増加していますので、要件②にももちろん該当します。
パッと見ると、要件①と要件②って何が違うの?と思いがちなのですが…よく見て下さい!こちらの要件は「前事業年度の給与等支給額を下回らないこと」です。
平成26年度(平成26年4月~平成27年3月)以降もこの制度を使う場合を考えてみるとわかりやすいかと思います。
・基準事業年度 → 平成24年度(給与216万円) ※基準になる事業年度は変わりません
・前事業年度 → 平成25年度(給与228万円)
となりますので、要件①、②は全く別なんですね。
要件③ 平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回らないこと
平均給与等支給額とは、給与等支給額(日々雇い入れられる者を除く)を、適用事業年度における給与等の月別支給対象者(日々雇い入れられる者を除く)の数を合計した数で除して計算した金額をいいます。
平成26年度の給与は月額19万円で据え置き、新たに月の平均給与が5万円のパートさんを1名雇ったとしましょう。
給与の総額は増えますので、要件①②には該当しますが、平均給与等支給額は、
【平成25年度】
228万円(※1) ÷ 12人(※2) = 19万円
※1 19万×12ヶ月 ※2 1人×12ヶ月
【平成26年度】
288万円(※3) ÷ 24人(※4) = 12万円
※3 (19万+5万)×12ヶ月 ※4 2人×12ヶ月
と減少しますので、要件③に該当しないこととなってしまいます。
起業当初ほど使いやすい?
この所得拡大促進税制なのですが、起業してすぐの場合は優遇があります。
平成25年4月1日以降に新たに事業を開始した場合、要件①の基準雇用者給与等支給額は、
第1期目の給与等支給額 × 70%
という計算方法になります。(初年度が12ヶ月ではない場合は、年換算して下さい)
逆に言うと、何もしなくても必ず30%お給料を増やした計算にしてもらえるので、要件①にかなり該当しやすくなります!
また、確定ではありませんが、「設立第1期目からでもこの制度が使えるのでは?」という話も出ています。
現時点では、この制度についての詳しい情報は、経済産業省からの発表しかありません。
国税庁からの通達として正式発表がされていないので確実ではありませんし、具体的な計算方法も不明です。
ですが、もし使えるとなった場合、従業員を雇う新設法人の多くが、要件に該当する内容となる可能性があるのではないでしょうか?今後に注目です!
(正式発表されましたら、こちらのブログでもお知らせさせて頂きます)
所得拡大促進税制 最後に
この制度を利用するに当たっては、助成金とは違い、事前に届出書等を出す必要もありません。
今からでも遅くありませんので、ご自身の会社が該当するかどうか、確認してみてはいかがでしょうか?
もっと詳しく知りたい場合は、経済産業省の所得拡大促進税制のページもご覧下さい。
※所得拡大促進税制は、雇用促進税制との選択適用になります。