みなさんこんにちは。最近すっかり秋らしくなってきましたね。
以前、起業するならまずは、個人事業からでもいいのでは?という記事ご紹介させていただきました。そこで、今回は個人で起業される際に出さんと損する青色申告承認申請書についてお伝えいたします。今回は税理士法人中央会計の中川がお送りします。
< 目 次 >
・其の一 青色申告特別控除で65万円トクをする
・其の二 青色事業専従者給与控除でトクをする
・其の三 事業損失の3年繰越控除でトクをする
・開業したら「青色申告承認申請書」の提出を!
・住民税や国民健康保険も得するよ!
青色申告の3つのメリット~個人編~
突然ですが皆さま。ここでクイズです ♪
AさんとBさん、2人の個人事業者がいます。
この2人は下記の表のとおり同じ売上で同じ経費がかかっています。
ところが税金の計算をしてみると、
Aさんは約93万円の税金等(所得税・住民税・国民健康保険料)を税務署に納め、
Bさんは約121万円の税金等を納めました。
同じ利益がでてるようにみえるのにどうしてこういう計算になるのでしょうか。
このカラクリを見ていきたいと思います。
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Aさん |
Bさん |
年間収入 |
5,500,000円 |
5,500,000円 |
必要経費 |
300,000円 |
300,000円 |
配偶者への給与 |
1,000,000円 |
1,000,000円 |
基礎控除 |
380,000円 |
380,000円 |
その他の控除(保険料等) |
300,000円 |
300,000円 |
其の一 青色申告特別控除で65万円トクをする
青色申告特別控除とは、その名のとおり、青色申告者だけが特別に一定額を所得から控除してもらえる制度です。
これには65万円の控除と10万円の控除があります。控除の金額が違いますのでもちろんそれぞれ受けるための要件は違ってきます。
65万円の控除を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。
- 事業所得もしくは不動産所得が発生する事業を行っている
- これらの所得にかかる取引を正規の簿記の原則(複式簿記)で記帳している
- 2の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除を受ける金額を記載して法廷申告期限内に提出すること
となっています。
10万円の控除は上記の65万円控除を受けられない青色申告者が受けることができます。
簡易帳簿ではなく「正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)」を選んでおいた方が税金面においても有利ですし、また経営的側面で考えるときちんとした計算書類は経営判断を行う重要な要素ともなりますのでベターです。
経費が65万円分計上できると考えるとなかなかの金額ですし、せっかく帳簿をつけるのであれば税金のためだけではなく経営に役立つようにしたいですね。
其の二 青色事業専従者給与控除でトクをする
家族で事業を行っている場合には、一緒に生活をする 配偶者(ご主人/奥様)や 親族(祖父/祖母/子など。15歳未満を除く) に給与を支払うことがあると思います。
実はこれらの給与は原則的には必要経費とはなりません。
ただし、青色申告者の場合は一定の要件を満たすとこの給与の額を必要経費とすることができます。
- 青色事業専従者に支払われた給与であること
イ.青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
ロ.その年の12月31日時点で15歳以上であること
ハ.その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の1/2を超える期間)その事業に専ら従事していること - 「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること
- 届書に記載されている方法で支払われ、金額は記載されている範囲内のものであること
- 給与の額は労務の対価として相当であると認められる金額であること
この特例を受けるためにはまず、2の届出書をその年の3月15日まで、もしくは新たに事業専従者(配偶者や親族)を雇った場合はその日から2か月以内に提出する必要があります。
給与の金額が必要経費になるかならないかで大きく税金が変わってくる場合がありますので青色事業専従者給与を支払っている方は必ず届出書を提出してくださいね。
其の三 事業損失の3年繰越控除でトクをする
青色申告者は「開業して2~3年間は赤字が出たが、その後は黒字になった」という場合にトクします。
事業所得などで赤字がある場合で、他の所得と損益を通算しても控除しきれない部分の金額は純損失の金額としてその額を翌年以後3年間にわたり繰り越して所得から控除します。
例えば、、、
1年目が100万円の赤字、2年目は30万円の黒字、3年目は40万円の黒字、4年目は70万円の黒字になったとします。
赤字の繰り越しができなければ赤字となった1年目は税金を納める必要はありませんが2年目からはその年分の所得に応じて税金を計算することとなります。
赤字の繰り越しができると、1年目はもちろん、2年目、3年目の利益を1年目の赤字と相殺しますので課税所得は0円となり、4年目は70万円の黒字から30万円を引いた40万円分の部分だけが課税の対象となります。
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1年目 |
2年目 |
3年目 |
4年目 |
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課税所得 の額 |
青色申告 |
△1,000,000円 |
0円 |
0円 |
400,000円 |
白色申告 |
△1,000,000円 |
300,000円 |
400,000円 |
700,000円 |
青色申告の場合、1年目の赤字を繰越して2年目以降の利益と相殺することができます☆
個人事業者になったら「青色申告承認申請書」の提出をお忘れなく!!
ここまでに紹介した特例は青色申告承認申請書を提出して青色申告者として認められなければなりません。
個人事業者になったら、「個人事業の開業・廃業等届出書」とあわせて「所得税の青色申告承認申請書」を提出しましょう!
また提出期限も要注意です!
提出する場合は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで、もしくは、その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合には、その事業開始等の日から2ヶ月以内が期限となります。
※提出期限は、法人は新たに事業を開始してから3ヶ月以内ですが、個人事業者は2ヶ月以内です。
最後まで読んで下さった皆様にクイズは忘れているかもしれませんが種明かしです☆
AさんBさんの所得税額はそれぞれ以下のように計算しました。
|
Aさん(青色申告) |
Bさん(白色申告) |
収入 |
5,500,000円 |
5,500,000円 |
必要経費 |
300,000円 |
300,000円 |
配偶者への給与 |
1,000,000円 |
860,000円 |
青色申告特別控除 |
650,000円 |
なし |
合計所得金額 |
3,550,000円 |
4,340,000円 |
その他の控除 |
300,000円 |
300,000円 |
基礎控除 |
380,000円(所得税) 330,000円(住民税) |
380,000円(所得税) 330,000円(住民税)
|
課税所得金額 |
2,870,000円 |
3,660,000円 |
所得税額 |
2,870,000×10%-97500 =189,500円 |
3,660,000×20%-427500 =304,500円 |
Aさんの場合、収入金額550万円から必要経費30万円と配偶者への給与100万円、基礎控除38万円、その他の控除30万円を控除した課税所得金額からさらに青色申告特別控除65万円を控除した後の金額に所得税率を乗して計算しています。
Bさんの場合、青色申告の適用を受けていない為、配偶者への給与が86万円までしか計上できず、青色申告特別控除の適用もありません。
その結果Bさんの方がAさんに比べ税務上費用として認められる額が79万円少なくなってしまいました。
さらに、所得税は、たくさん儲けた人には大きい税率が適用されてしまいます。そのため、BさんはAさんの1.5倍以上の税金を払うことになってしまったんです。
住民税や国民健康保険も得するよ!
実は、青色申告特別控除は、住民税と国民健康保険の負担にも影響があります。
では早速住民税から計算してみましょう!
※住民税の均等割や国民健康保険料は都道府県によって若干計算方法が異なりますので今回は大阪市をベースとして計算しています。
住民税は所得に関係なくかかる均等割と所得の金額によって増減する所得割の合計によって計算されます。
下記の計算結果によるとBさんのほうが約8万円多く住民税を支払っています。
Aさん |
Bさん |
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住民税 |
均等割 |
4,000円 | 4,000円 |
所得割 |
収 入 5,500,000円 必要経費 △1,950,000円 所得控除 △630,000円 課税所得 2,920,000円 2,920,000 × 10% |
収 入 5,500,000円 必要経費 △1,160,000円 所得控除 △630,000円 課税所得 3,710,000円 3,710,000 × 10% |
|
合計 |
296,000円 | 375,000円 |
次に国民健康保険料を見てみましょう。
国民健康保険料は、
・医療分保険料
・後期高齢者支援金分保険料
・介護分保険料
の3つの合計から構成されます。
さらにそれぞれの保険料は、
・平等割
・均等割
・所得割
の3つの計算方法によって算出されます。
下記の計算からするとBさんは約8万円ほど多い保険料を支払っています。
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Aさん |
Bさん |
|
国民健康 |
医療分 |
平等割 33,528円 |
平等割 33,528円 |
後期高齢者 |
平等割 11,565円 |
平等割 33,528円 |
|
介護分 |
該当者無し 0円 |
該当者無し 0円 |
|
合計 |
444,987円 |
530,149円 |
※被保険者数2名(夫・妻)夫婦ともに40歳未満として計算
住民税と国民健康保険料でBさんはAさんよりも約16万円多く税金や保険料を支払っていますね。
所得税も合わせると、約30万円得することになりますね。
詳細な計算式については下記HPをご覧下さい。
【大阪市HP】
個人住民税 http://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000028833.html
国民健康保険 http://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000007853.html
所得税税率表(平成25年4月1日現在法令のもの)
【国税帳HP】:http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm
皆さんもぜひ税額を計算し比べてみてください。
その他にも
①欠損金の繰越控除
②少額減価償却資産の特例
③雇用促進税制の適用
④所得拡大促進税制の適用
⑤中小企業技術基盤強化税制の適用
⑥中小企業投資促進税制の適用
⑦グリーン投資減税の適用
などのメリットがあります!詳しく知りたい方は、必見!出さんと大損!?青色申告で得られる7つのメリットと青色申告の承認申請書の提出期限のブログをご覧ください。