以前、資本金についてのブログを掲載させて頂きました。ご覧になって、「自分の場合、資本金は大きい方がよいみたいだけど……お金がない(><)」という方もいらっしゃるかと思います。

今回は、そんな時に使える「現物出資」についてご説明させて頂きます!

決算書

 < 目 次 >

 ・現物出資とは?

 ・現物出資できるものは、どんなもの?

 ・現物出資する財産の金額設定はどうすればよいの?

 ・現物出資と融資・許認可について

 ・最後に

 

現物出資とは?

現物出資とは、金銭以外にパソコン・自動車などの現物を出資することをいいます。

例えば、会社でパソコンが必要なので、個人で所有しているものをそのまま仕事で使う場合など。

パソコンを現物出資してしまうことで、キャッシュを出さずにその金額分の資本金を計上することができます。

このように、手持ちの現金が少なくても、資本金の大きな会社を作ることができるのです。

 

現物出資できるものは、どんなもの?

それでは、現物出資できる財産にはどういったものがあるのでしょうか?

法務局によると、

  1. 会社の貸借対照表に資産として載せられるものか
  2. 所有権の移転が可能なものか

が判断基準になるとのこと。

具体的には、

  • 動産(パソコン、ソフトウェア、自動車、什器備品 etc.)
  • 不動産(土地、建物)
  • 有価証券(株券、ゴルフ会員権 etc.)
  • 知的財産権(特許権、実用新案権、意匠権、著作権 etc.)
  • のれん(営業権、ノウハウ etc.)

 などがあたります。

ただし自動車などは、ローンで購入していてまだ完済していない場合、ローン会社が所有者となっている場合があります。
この場合は名義変更ができず、「2.所有権の移転が可能なものか」に該当しないため、現物出資財産とすることができませんので注意が必要です。

 

現物出資財産の金額設定はどうすればよいの?

現物出資する財産が決まったら、次はその金額をいくらにするか決定します。

以前は現物出資をする際、財産の評価は原則として検査役の調査が必要とされていました。
しかし、平成18年5月から施行されている新会社法では、現物出資財産の価額の総額が500万円を超えない場合は検査役による調査が不要となり、設立時取締役が調査すれば足りるようになりました。

自動車などでしたら、車屋さんで査定してもらい、下取り価格を聞いて参考にするのが一番簡単でしょう。パソコンや什器備品などは、中古市場で出回っている金額を調べてみるとよいかもしれません。

ただし、「500万円以下で外部の調査が不要だから、金額は自由に設定すればいいや」という考えで過大な評価額にしてしまうと、調査した取締役の責任を問われることになります。

この場合の責任については会社法では以下のように定められています。

——————————————————————————————————————————
(出資された財産等の価額が不足する場合の責任)
第五十二条 株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。
——————————————————————————————————————————

つまり、現物出資をした財産の設定金額と実際の時価などの価額が著しく低い場合には、発起人と設立時取締役の方は不足分を会社へ支払う義務が発生します。
必ず、客観的に見て適正な範囲内で金額を設定するようにしましょう!

現物出資の合計額が500万円を超える場合は、通常通り検査役の調査か、弁護士・会計士・税理士など(不動産については不動産鑑定士)の証明が必要になります。
なお、市場価格のある有価証券で法務省令に定める方法で算定されたものは、調査が免除されます。

 

現物出資と融資・許認可について

前回の記事で起業時の創業融資について書かせていただきましたが、日本政策金融公庫や保証協会の保証付き創業融資においては融資の要件に自己資金要件というものがあります。

  • 自己資金の要件
    事業開始前、または事業開始後で税務申告を終えていない場合は、創業時において創業資金総額の3分の1以上の自己資金(注)を確認できる方
    (注)事業に使用される予定のない資金は、本要件における自己資金には含みません。
    ※日本政策金融公庫新創業融資の概要より引用

注意していただきたいのは、現物出資した金額はこの自己資金として認識してもらえないことが多いです。ですので融資を考えられている方で自己資金要件を満たす場合は金銭の出資などで行うのがよいです。
また、創業融資を視野に入れて資本金を大きくしておきたいという方もいらっしゃるかと思います。
事業のために購入したことがきちんと証明できない資産や、領収書などが残っていない資産の場合、自己資金として見てもらえない場合がありますので注意しましょう。

また、許認可事業をはじめようと考えられている方は該当許認可についてきちんと確認しておく必要があります。
というのは財産的要件が定められているものがあり、現物出資で対応できない場合があるからです。

 

最後に

なるべく資本金は少なくしたい!という方は、今のところお会いしたいことがありません。もちろん、資本金は大きい方がメリットが多いからです。

そんな考えから、見せ金を使って資本金を計上するケースも見受けられます。しかし、資本金はあくまで会社への出資ですので、会社を作った後に引き出して返済してしまうと、出資者に対する貸付金として貸借対照表に計上されます。決算書の内容も悪くなりますし、そもそも他者を騙す行為です。

現物出資などの正しい方法を活用して、より自身に適切な会社で事業のスタートを切りましょう!

 

今回の記事は、FirstStep合田が担当させて頂きました。