今回は、フリーランスから会社設立された方や、脱サラから会社設立された方への税務調査事例を私の経験に基づきご紹介させていただきます。 これから会社設立されるフリーランスやサラリーマンの方たちの情報収集の一助となれば幸いです。
内容
- フリーランスからの会社設立
・税務調査事例
・元税務調査官からのアドバイス
・会社設立の届出書を税務署に提出しなかった場合 - 脱サラからの会社設立
・税務調査事例
・元税務調査官からのアドバイス
・留意事項 - 参考(無申告の会社について)
・会社設立の届出書を税務署に提出しなかった場合
・無申告の会社に対する調査
フリーランスからの会社設立
税務調査事例
サービス業を営むフリーランスのAさんは、事業規模拡大に伴って㈱B社を設立した。フリーランス時代からの得意先には、売上代金の振込口座を個人預金口座から会社名義の預金口座に振込先変更を依頼したが、年間3回程度しか取引がない㈱C社だけは、以前と同様に個人預金口座への振込入金を行っていた。
Aさんは営業等の業務の傍らに経理事務も行っており、忙しかったため、年間3回しかない㈱C社(個人預金入金)との取引について、会社名義の預金口座への振替処理および売上計上処理を失念した状態で、後日、個人預金口座から出金して個人的に消費してしまった。
その後・・数年後に㈱B社の税務調査が行われ、税務署の担当調査官はAさんの個人預金口座資料を携行しており、㈱C社との取引について厳しく質問調査するとともに、㈱C社の反面調査も行われた結果、㈱C社(個人預金入金分)の売上を計上しなかったことがバレてしまった。
その結果
当然のことだが、追徴税額は重加算税(本税の35%)対象となり、㈱C社にも迷惑をかけてしまった。
元税務調査官からのアドバイス
- フリーランス時代の預金口座を廃止して、粘り強く㈱C社に決済方法の変更を依頼する。
- 個人預金口座に入金された場合は、個人預金口座から会社名義の個人預金口座への振替処理および売上計上処理を確実に行う。
脱サラからの会社設立
税務調査事例
大手コンサルタント会社に勤務していたDさんは、脱サラしてコンサルタント会社の㈱E社を設立した。Dさんはサラリーマン時代の人脈を活かして営業活動を行ったおり、会社の業績も好調だったが社員はいなくDさんのみで営業や経理を含めた業務全般を行っていた。
Dさんは営業上必要な時に、会社名義の預金口座から、仮払金として現金を出金して取引先の接待を行っていたが、忙しさのあまり、日々の仮払金を精算しなかったとともに接待で支出した際の領収証等の保存も悪く、紛失した領収証も多数あったため、決算期末に仮払金の精算を行った結果、数十万円の仮払金が残ってしまった。
Dさんは残ってしまった数十万円の仮払金を精算するために何の根拠もなく架空に雑費を計上して、仮払金を精算する経理処理を行ってしまった。
その後・・数年後に㈱E社の税務調査が行われ、仮払金の精算状況を確認していた税務署の担当調査官は、決算期末に証票類のない雑費計上に着目してDさんを質問攻めにした結果、観念したDさんは仮払金を精算する目的で、架空に雑費を計上していた事実を認めた。
その結果
当然のことだが、追徴税額は重加算税対象として課税された。
元税務調査官からのアドバイス
- 仮払金などは、その都度、精算するとともに支出した際の領収証等の証票類の保存もしっかりと行う。
- 社長のみで会社業務の全般を行っている場合は、経理事務に専念する時間をつくる。
留意事項
- サラリーマン時代に経理経験のない場合は、経理知識を習得する。
- 納税資金を念頭において、資金繰りを計画する。
参考(無申告の会社について)
会社設立の届出書を税務署に提出しなかったら・・・
質問 税務署に会社の存在がバレないか?
回答 税務署は法務局などで会社設立の情報を把握しています。
質問 会社設立の届出書を税務署に提出しなかった場合リスクはありますか?
回答 青色承認申請書などの特典を受けるための書類も提出できない。
無申告の会社に対する税務調査
税務署の調査担当の調査官は、無申告の会社に対する調査(簡易調査を含む)件数を割り振られ、積極的に調査を行っています。また、無申告の会社に対する資料情報も蓄積しています。
※資料情報の詳細については「税務署の組織力」を参照下さい。
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