今回は東大阪商工会議所で開催された創業塾2日目の講義内容についてご説明させていただきます。
2日目は「決算書の読み方」「ローコスト創業」「利益計画の立て方」について講義させていただきました。
決算書の見方
決算書の役割
動画がございますので、補足として内容を説明させていただきます。
決算書とは、一定期間の経営成績を明らかにする「損益計算書」と一定時点の財政状態を明らかにする「貸借対照表」から構成されます。
決算書は税務署や金融機関などに提出するために作成していると思っておられるケースがあります。もちろん税務署には毎年一度決算申告を行わなければいけませんが、本来決算書とは、自社の経営成績や財務状況を的確に把握するために作成しているものだと考えるべきです。
もちろん自社の状況を把握するために、年1回の決算書を作るだけでは、経営判断ができないと思いますので、毎月決算書を作成(月次決算)し、自社の状況を常に把握しておく必要があります。
損益計算図
今回のセミナーでは損益計算書よりわかりやすく理解できるように図解化した「損益計算図」のご説明をさせていただきました。
上記の図が損益計算図になります。セミナーではこの図を使ってもらいながら、事例問題を受講者のみなさまに解いていただきました。
損益計算図についてもっと知りたいというかたは、「起業するなら知ってて欲しい!決算書を理解するために必要な3つのこと」をご覧ください。
ローコストで創業
コストの4分類
ローコストで創業するために、じゃあどこのコストから削減したらいいの?という疑問があります。
コストは何でも削減したらよいわけではなく、かけるべきところにはかけ、無駄なものから削減していきます。その優先順位を明確にするのに役立つのが「コストの4分類」です。
このコストの分類は「旅費交通費」「接待交際費」などの会計の視点からではなく、活動の視点からコストを以下の4つに分類します。直接的な費用だけでなく、「時間」もコストと捉えて分類します。
- 生産的コスト
顧客が必要としていて、代金を払ってくれる価値を提供するための活動コスト - 補助的コスト
経済的価値を生み出さないが、経済活動を進める上で回避できない活動のコスト - 監視的コスト
悪いことが起きないようにするための活動のコスト - 浪費的コスト
成果を生まない活動のコスト
コストの分類を上記のように活動の視点から考えます。コストをかける目的をもう一度考え、事業を開始するのだからとりあえず事務所を借りないといけないな、とりあえず事務員を雇おうか、とりあえず自社HPっているよね、などの目的は浪費的コストと考えられます。コストをかけるからには目的があるはずです。
コストをかける順序は 生産的コスト>補助的コスト>監視的コスト>浪費的コスト になります。
コストの削減についてもっと知りたいかたは「起業前に知ってて欲しい5つのこと|起業・独立・副業を考えている方向け、自宅で起業(開業)するメリット7つ・デメリット4つとおまけもご覧ください。
利益計画の立て方
実際に事業を開始してから「あれ?思ったよりも開業に経費がかかったぞ…」とか、「売上が予定よりちょっと足りてないせいで資金が足らない、どうしよう…」などに直面してから気づいても対応が後手にまわってしまいます。
事前に利益計画、資金計画を立てておくことで余裕をもった資金計画を立て、事業を開始してからは予算と実績を比較し、事前に資金が足らなくなることがわかったときにすぐ対策を打つことができます。
計画書は事業経営をしていく上での非常に重要な参謀といえます。以下では計画の立て方についてご説明させていただきます。
- 必要資金を検討しましょう
- 開業時の資金調達を検討しましょう
- 初年度売上計画を検討しましょう
- 収支計画を検討しましょう
- 資金繰りの基礎を学びましょう
1.必要資金を検討しましょう
開業に必要な資金を洗い出します。実際に開業することを想定して開業準備から開業までにかかる必要資金を検討します。
先輩経営者などに相談すると自分が見えてなかったものも発見できたりします。
- 家賃等
地代家賃、敷金礼金、仲介手数料など。 - 設備費
内装工事、車両や什器、その他開業に必要な備品等。 - 商品
商品や材料の在庫が必要な商売であれば必要になります。 - 人件費
開業当初から従業員が必要となりますか?社会保険の加入の必要があればそれも加味します。 - 広告宣伝費
開業時の集客のために広告を行う場合は考慮します。なるべく費用をかけずに行えないか検討します。
開業後すぐに利益があがらないことも多いです。その場合は開業後に発生する赤字の補填分も必要資金として検討しておく必要があります。
開業後の赤字分については後述する収支計画の項目で計算します。
2.開業時の資金調達を検討しましょう
開業時の必要資金をどのような方法で調達するかを検討します。
自己で用意する資金と借入を行って用意する資金に分かれます。
- 自己資金
自分の貯金、親族などからの援助 - 借入金
金融機関(日本政策金融公庫、各種銀行など)
知人や親戚などから借りることもあります。
開業時から多額の借入があるとその後の収支計画において負担となります。なるべく自己資金でまかなえるようにしてから創業するのがベターです。
3.初年度売上計画を検討しましょう
売上計画を検討します。売上ってどうやって予測するの?ということですが、3つのポイントがあります。
- 売上高 = 数量 × 単価
- 数量とは「客数」「工数」「請負数」「販売数」
時間帯や曜日、季節変動がある場合は考慮します。 - 単価は平均単価で計算します。
時間帯や曜日、季節変動がある場合は考慮します。
「数量」や「単価」はその数値の根拠はありますでしょうか。開業時には夢をもって大きく考えすぎてしますものです。
現実的な数値計画になっていないか再度確認してください。
場合によっては同業他社や近隣の店舗などを参考にするのもよいですね。
4.収支計画を検討しましょう
開業後の収支計画を検討します。
収支計画をたてる際のポイントは大きくわけて3つです。
- まずはなんといっても黒字計画
黒字の計画にならないと意味がありません。収支計画が赤字になった場合は見直しを行います。 - 借入金の返済について
利益がプラスになったとしても資金がプラスにならないと手元のキャッシュは減っていってしまいます。借入金の返済をまかなえる利益がだせているでしょうか。 - 開業後赤字分を計算する
収支計画を立てたとき、借入金返済後の資金残高のマイナス分を合計したものが開業後の赤字分です。この赤字は開業時に必要資金として検討しておかなくてはなりません。
5.資金繰りの基礎を学びましょう
事業経営が行き詰るときの一番の理由は資金がまわらなくなったときです。
資金繰りとは現金の収支をチェックし、事業資金が不足しないようにすることです。帳簿上は儲かっていても売掛金の入金が遅くて支払いにまわす資金が足りなくなったり、売れ残ってしまって多額の在庫を抱えてしまったときなどにも資金繰りが悪化します。また借入金の返済が多額で利益はでていても返済のほうが大きくて追いつかない場合も多く見受けられます。
このようなことにならないためにも、開業時には取引先との取引条件など資金繰りに影響するものは不利な条件にならないよう取り決めておきましょう。
- 売掛金の回収サイトや受取手形での回収
- 買掛金の支払いサイト
- 在庫(キャッシュが商品などに変わっています、不要な在庫は資金繰り悪化の原因のひとつです)