地球・グローバルイメージこんにちは!FirstStepの井阪です。
グローバル企業がタックスヘイブンや税率の低い国を経由した取引を利用した節税対策が問題となっております。
今回はこの問題となっている取引に対する対策として、最近ニュースでもよく耳にする「BEPS」について紹介したいと思います。

 

  1. BEPS(Base Erosion Profit Shifting)とは?
  2. 同じ電子書籍でも、外国法人から購入する方がお得!?
  3. タックスヘイブン地域に子会社を設立すれば、税金が安くなる!?
  4. 巨額の含み益を抱えてれば、非居住者になれば得をする!?
  5. OECD租税委員会 BEPS15の行動計画

 

1.BEPS (Base Erosion Profit Shifting)とは?

BEPSとは「Base Erosion and Profit Shifting」の頭文字による略語です。日本語では「税源浸食と利益移転」と言われています。
グローバル企業等がグループ関連者間における国際取引により、二国以上の課税制度の違いから生じる国際的二重非課税を利用して租税回避行為を行うことがあります。
少し難しくて、いまいちピンとこないですよね。
簡単に言えば、各国の課税制度の違いを利用して税率の高い国から無税又は低い税率の国へ所得を移し、納税額を最小限に抑える行為です。

近年では、スターバックス、アマゾン、グーグルやアップルなどの世界的に有名なグローバル企業のBEPSがニュースで取り上げられていたのでご存知の方も多いと思います。
例えば、スターバックスの場合は、英国に進出して以来14年間で約3840億円の売上を計上していますが支払った法人税は約11億円です。
しかも、2008年以降は全く英国の法人税を支払っていません。
その手法としましては、知的財産権や商標権の使用料をオランダの本社に支払ったり、スイスよりコーヒー豆を仕入れたりと、法人税が高い英国での利益をさまざまな方法で、法人税の低い国に移していました。
これらの行為はただちに違法とはいえないが、税制度や租税条約の隙間をついた手法といわれ批判が集まっています。

この様な事態に、経済協力開発機構(OECD)はグローバル企業の行き過ぎた節税を防ぐためのBEPS対策として、15項目の行動計画を発表しました。
平成27年の税制改正にも組み込まれるかもしれないのでいくつかを紹介したいと思います。

 

2.同じ電子書籍でも、外国法人から購入する方がお得!?

15項目の行動計画の「行動1:電子商取引課税」

【課題】
国際間における電子商取引(音楽配信、電子書籍事業など)は、実際にサービスの提供が行われる国内に支店や事業所等(恒久的施設:PE)がなくても問題なく取引が行えます。その結果実際に経済活動が行われる国内において、法人税や消費税が十分に課税できていません。

その結果、日本国内でアマゾンなど海外事業者からネット販売を通じて買った電子書籍には消費税がかからず、またその販売から得た利益に対してはその会社が存在する国で納税が行われます。国内で販売している事業者の販売価格には消費税はもちろん税率の高い法人税等も含めた金額も含めて商品価格を設定するため、国内の事業者は価格競争で負けてしまいます。

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電子経済

【対策】
これら新たな電子経済がもたらす幅広い課税問題に対して報告がなされています。

PE(恒久的施設)について

従来のPE(恒久的施設)の概念は、課税の根拠を物理的拠点と捉えているが、電子商取引においては物理的拠点がなくても十分に経済活動が行えるため、新たなPEの概念が必要ではないか、としてその方向性が示されています。

  1. 「PEから除外される範囲」の見直し
    PEは事業活動を行う一定の場所という物理的拠点で定義されています。しかし、OECDモデル条約5条4項ではその事業組織が行う活動が準備的・補助的である場合にはPEの範囲から除外するという規定になっています。この規定の見直しを行うべきか。
  2. 「Significant Digital Presence」に基づく新たな課税の根拠となる結びつきの創設
    顧客との取引がウェブ上で完結するようなケースにおいて、源泉地国での経済活動がビジネスの中核となっているような場合、または源泉地国において顧客の個人データを定期的かつシステマティックに収集等を行っている場合に、源泉地国にPEを有しているとみなしてはどうか。
  3. 仮想PEの創設
    企業が第三者のサーバにウェブサイトを開設し、そこを通じて第三者の所在地国においてビジネスを行っている場合に、第三者の所在地国に仮想固定的PEを有しているとみなしてはどうか。
  4. 電子取引に対する新たな源泉徴収税の創設
    国境を越える電子取引に関して、クレジットカード会社等の金融機関に源泉徴収義務を課してはどうか。
  5. 消費課税
    国境を越えるB2Cの電子取引に関して、外国事業者を顧客の所在地国で登録させてはどうか。

また、日本の対策としては政府税調が電子商取引への消費税課税に関する政策案を示しています。
27年度税制改正において、制度の詳細を検討中です。

 

3.タックスヘイブン地域に子会社を設立すれば、税金が安くなる!?

 行動3:外国子会社合算税制の強化

外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)とは、いわゆるタックスヘイブン(租税回避地)と言われる国に子会社等を通じて租税回避を図る行為を規制するための制度です。
日本の内国法人である親会社が、タックスヘイブンの地域に子会社を設立して、利益を留保することにより、日本での課税を免れるような租税回避を防止するための規定です。
BEPS対策として、各国が最低限導入すべき国内法の基準について勧告を策定しています。

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4.巨額の含み益を抱えていれば、非居住者になれば得をする!?

行動6:租税条約濫用の防止

【課題】
条約漁り(第三国の居住者が不当に条約の特典を得ようとする行為)をはじめとした租税条約の濫用は、BEPSの最も重要な原因の一つになっています。
租税回避行為を防止するための国内法がありますが、租税条約が優先適用されるためにうまく機能しないことがあります。
租税条約上、株式等のキャピタルゲインについては、株式等を売却した者が居住している国に課税権があるとされています。
これを利用し、株式等で巨額な含み益を抱えたままシンガポールなどのキャピタルゲイン課税のない国に出国し、その国の居住者となった後に保有している株式などを売却することで課税を逃れることができます。

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【対策】
課題にあげられるような税負担の回避を防止する措置として、一部の先進諸国等においては既に出国時にまだ売却されていない未実現のキャピタルゲインについて課税を行う特例措置がとられています。
日本においても9月に公表されたBEPSプロジェクトの報告書で、出国時における未実現のキャピタルゲインについて譲渡所得課税を行う方向性が示されています。

 

6.OECD租税委員会 BEPS15の行動計画

財務省説明資料(BEPSプロジェクトの進捗状況)より、BEPS15の行動計画を紹介します。

  1. 電子商取引課税
    電子商取引により、他国から遠隔で販売、サービス提供等の経済活動ができることに鑑みて、電子 商取引に対する直接税・間接税のあり方を検討する報告書を作成。
  2. ハイブリッド・ミスマッチの効果の無効化
    ハイブリッド・ミスマッチとは、金融商品や事業体に対する複数国間における税務上の取扱いの差異であり、これを利用した税負担の軽減が問題視されている。ハイブリッド・ミスマッチの効果を無効化する国内法上の措置を勧告するとともに、モデル条約の規定を策定する。
  3. 外国子会社合算税制の強化
    外国子会社合算税制(一定以下の課税しか受けていない外国子会社への利益移転を防ぐため、外国子会社の利益を親会社の利益に合算)に関して、各国が最低限導入すべき国内法の基準について勧告を策定する。
  4. 利子等の損金算入を通じた税源浸食の制限
    支払利子等の損金算入を制限する措置の設計に関して、各国が最低限導入すべき国内法の基準について勧告を策定する。 また、親子会社間等の金融取引に関する移転価格ガイドラインを策定する。
  5. 有害税制への対抗
    OECDの定義する「有害税制」について
    ① 現在の枠組み(透明性や実質的活動等に焦点)に基づき、加盟国の優遇税制を審査する。 ② 現在の枠組み(透明性や実質的活動等に焦点)に基づき、OECD非加盟国を関与させる。 ③ 現在の枠組みの改定・追加を検討。 
  6. 租税条約濫用の防止
    条約締約国でない第三国の個人・法人等が不当に租税条約の特典を享受する濫用を防止するためのモデル条約規定及び国内法に関する勧告を策定する。
  7. 恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止
    人為的に恒久的施設の認定を免れることを防止するために、租税条約の恒久的施設(PE:Permanent Establishment)の定義を変更する。
  8. 移転価格税制(①無形資産)
    親子会社間等で、特許等の無形資産を移転することで生じるBEPSを防止するルールを策定する(移転価格ガイドラインの改訂)。
    また、価格付けが困難な無形資産の移転に関する特別ルールを策定する。 
  9. 移転価格税制(②リスクと資本)
    親子会社間等のリスクの移転又は資本の過剰な配分によるBEPSを防止する国内法に関する移転価格ガイドラインを策定する。
  10. 移転価格税制(③他の租税回避の可能性が高い取引)
    非関連者との間では非常に稀にしか発生しない取引や管理報酬の支払いを関与させることで生じるBEPSを防止する国内法に関する移転価格ガイドラインを策定する。
  11. BEPSの規模や経済的効果の指標を政府からOECDに集約し、分析する方法を策定する 
  12. タックス・プランニングの報告義務
    タックス・プランニングを政府に報告する国内法上の義務規定に関する勧告を策定する。
  13. 移転価格関連の文書化の再検討
    移転価格税制の文書化に関する規定を策定する。多国籍企業に対し、国毎の所得、経済活動、納税額の配分に関する情報を、共通様式に従って各国政府に報告させる。
  14. 相互協議の効果的実施
    国際税務の紛争を国家間の相互協議や仲裁により効果的に解決する方法を策定する。
  15. 多国間協定の開発
    BEPS対策措置を効率的に実現させるための多国間協定の開発に関する国際法の課題を分析する。その後、多国間協定案を開発する。

 

現在は違法な脱税にはなりませんが通常であれば行われないような手法での取引により課税を免れることができています。経済協力開発機構(OECD)のBEPS対策としての行動計画により、日本でも税制改正が行われると言われております。
早ければ、平成27年の税制改正に盛り込まれる可能性もありますので、今後の動きに注目したいと思います。