偶然見つけた求人が、天職の道への始まり
日本の経済状況を反映してか、リサイクルショップが人気を集めている。
株式会社HALFの代表取締役である藤原広司氏は、大阪市東淀川区と豊中市にリサイクルショップ「PLUS(プラス)」を展開している。以前はアパレル関係の会社に勤務し、店頭で販売を担当していた。
「30歳目前のある日、このまま販売員を続ける自分の将来像が浮かんでこなくなったんです。当時は本部勤務の話もあったのですが、デスクワークは向いていないと感じていました。次第に『自分の天職は別にある』と思うようになり、会社を辞めることにしました」
いつかは独立して一国一城の主に……という想いを持っていた藤原氏だが、ここで現実を知ることになった。
「横の繋がり、人脈、モノの目利き、技術、自分は何も持っていないことに気づいたんです」
そんな時見つけたのが、就職情報サイトでリサイクルショップの立ち上げメンバー募集だった。
「募集の広告を見て何かピンときたんですよ。当時は、まだリサイクルショップブーム前。何とか入社して、仲間と試行錯誤しながら店舗を立ち上げました。仕事の大半はお客様のクレームで学んだようなものです。でも、本当に楽しくて充実していましたね」
そして4年ほど働いて独立。
「いずれは独立、と考えていました。退職することを仲間に伝えると、立ち上げに関わった同期入社の2人が一緒にやりたいと仲間に加わってくれることになったんです。本当に嬉しかった」
3人で会社を立ち上げて役割分担を話し合った結果、藤原氏が代表取締役として裏方全般を担当することになった。
責任が増えれば、やりがいも増える
経営する側になると心境的には大きな変化があったという。
「責任感が全然違いますね。経営的にはシビアになりますし、数十人いるスタッフの生活がかかっていると考えれば、やはり責任は大きい。でも、その分やりがいも大きいですね」
経営の奥深さも感じている。
「社員の時とは違い、経営者という立場になれば自由は増えます。でも、確かに自由なのですが、まったく思い通りに行かないことに直面する機会も増えます。例えば世の中は勝手に不景気になっていきますし、お客様なかなか思い通りにはアクションしてくれない。でも、それが経営に直結してくる。自分の思い通りに行動することが、本当の自由ではないと知りました」
また、リサイクルショップという業態は立地や商品力が重要と思いきや、実は「人材」こそ最も重要な要素なのだそうだ。
「買取も販売も、景気や時期によって各商品の価格は変動します。また、大まかな指針はありますが、最終的にはお客様とスタッフの一対一のコミュニケーションによって価格が決まります。そこには臨機応変な対応力、柔軟なコミュニケーション力が必要になります。つまり、リサイクルショップの成長には、人材育成が欠かせないんですよ」
藤原氏にとって、スタッフの成長は自身の成長以上の喜びであり楽しみだという。
しんどいことを楽しめるか、それが成功へのカギ
これから起業しようと考えている人へのメッセージをお願いすると、藤原氏の口から真っ直ぐな答えが返ってきた。
「一言で言うと『タイミングを逃すな』ですね。でも、私自身が最適なタイミングを掴んで起業できたと思えません(笑)。でも振り返ると、すべてはタイミングなんですよ」
実際に起業してみると、起業前のイメージ通りに物事がスムーズに運ぶことはあり得ないという。
「とにかく想定外の障害が数多く立ちはだかります。でもそれが当たり前。『今想像しているよりも全然大変だ』と考えておいた方がいいですよ」
それでも多くの経営者が諦めることなく前に進むのはなぜか。答えは明確だった。
「そのしんどさや大変さを重荷に感じてしまうと、その先にあるのはマイナス思考だけ。でも、前に進めば収入や人脈などのカタチで必ず得られるものがあります。そこを見て、いかに『しんどさ』を『楽しさ』に変えていけるかですね」
最後に今後の目標をたずねた。
「リサイクル業界そのものが転換期にあります。最近は、経営の安定化を図るためにも多角化に取り組もうと考え、念願の飲食業に進出する準備をしてきました。飲食業界の人脈もできたので、本格的な展開を目指してアクションしていきます」
担当者より
株式会社HALF様を担当させていただいて約3年が経ちました。
毎年着実に成長を遂げておられるのですが、いつも驚くのは、藤原社長ご自身が会社の数字や状況をとても細かく分析されており、会社の「今」を非常に理解しておらること。藤原社長がいれば株式会社HALF様は伸び続けることができると確信しています。
現在、2店舗を運営されていますが、5年後、10年後には5店舗、10店舗と増え続けることは間違いないと感じています。これからも微力ながらお手伝いさせていただきますので、末長くよろしくお願いいたします。 (山尾 祐介)