何があっても「お客さまのために」を貫き通した
ハーレーダビッドソンをはじめとしたバイクのカスタマイズ専門ショップ『TRIJYA(トライジャ)』を運営する株式会社ウイオール。「お客さまが持ち込んだバイクをカスタムするケースが多いですね」と語る代表取締役の岡本佳之氏は、元銀行員という経歴の持ち主だ。
「勤めていた銀行が経営破綻してしまい、経営を引き継いだ銀行に移らずに起業することにしました。ただ、起業できるようなノウハウは何もなかったので、私が学生時代に飲食店でバイトした経験からカフェバーを、妻はデザイン会社を立ち上げました」
カフェバーは岡本氏自身が店に立ち、奥様は自動車店のロゴやフライヤー、カスタムカー用のカッティングシートのデザインなどを行っていた。そんな時、大きな転機が訪れる。
「銀行員時代からバイクのカスタムが趣味で、職人さんに『こんなイメージのものを作って欲しい』とお願いして作ってもらっていました。ある時、そのバイクがカスタムバイク雑誌の表紙を飾ったのです。すると、様々な人からバイクカスタム製作の依頼が舞い込むようになりました。ただ、私は作ることができません。そんな時にカスタム製作をやりたいという人と出会い、店の一角で一緒にカスタムバイクショップを始めることにしました」
ただ、起業当初はアイディアを盗まれたり、騙されたり、トラブルに巻き込まれたり、と辛く厳しい思いをたくさん味わったという。
「信じているお客さまや従業員に騙されたことも一度や二度じゃありません。でも、銀行員時代から私のポリシーは『常にお客さまのために』でした。おかげさまでお客さまが絶えることはなく、むしろたくさんの良いお客さまが店を助けてくれました。おかげさまで、今では素晴らしいお客様ばかりです(笑)」
自分を磨き続ければ、周囲の人も変わる
FirstStepとの出会いは、すでにウイオールが法人化し、現在の場所にショップをオープンしたあとだった。
「妻が大阪市内で別の会社を設立することになり、FirstStepに依頼しました。ウイオールの経営が上手くいかないと悩んでいる時に、少しだけ経営数字を見ていただいたんです。その時のアドバイスがすごく納得できるもので……すぐにそれまでの税理士さんと交代してもらうことを決めました」
この後、アドバイスにもとづいて会社改革に着手し、改革を見事に成功させた岡本氏。以来、悩みを聞いてもらうことで心の余裕が生まれた上、めざすべき経営の方向性が明確になったという。
「最終的な判断は経営者である自分で行いますが、その決断が自信を持って行えるようになりました」
そんな岡本氏が、仕事に取り組む上で最も大切にしているのが、「自分がどういう人になるか」ということ。
「私が自分自身に毎日言い聞かせていることがあります。それは父の遺言でもある『会社は継続し続けることが最も重要』ということ。そのためには社員や家族、お客さまといった周囲の人ではなく、まず自分自身がどんな人間であるべきかを自問自答し続けることが必要だと考えました」
自問自答を続けながら会社を経営するようになると、少しずつ売上はアップし、同時に周囲の人々の変化を感じるようになったという。
「最近は、スタッフやお客さまから誕生日や父の日を祝っていただけるようになりました。特に、父の日に若いお客さまからプレゼントやカードをいただいた時は本当に嬉しかった。私が自問自答しながら理想をめざす姿を見てくれているのだと感動しました」
嫌なことは真っ先に片付けるべし!
自らを見つめ直し続けることで、スタッフやお客さまと良い関係を築く岡本氏。これから起業しようと考える人へのメッセージをお願いした。
「売上、原価(仕入れ)、粗利益、固定費、純利益、税金の6つを正しく把握できれば、会社にきちんと利益が残る構造が作れるので大丈夫。これらの言葉の意味すらわからずに起業するのは、やめておくべきだと思います。きっと、お金の面で辛い思いをするだけですから」
さらにもう一つ「嫌なことは真っ先に取り組んで片付けること」というメッセージをいただいた。
「経営者は、自分が逃げたら誰も代わりがいませんから、逃げても何も変わりません。しかも、逃げても叱る人がいないので後回しになる。すると最終的には大きな問題になって、経営者である自分自身がさらに辛い思いをすることになります。だから逃げちゃいけない」
最後に今後の展開をおうかがいした。
「父親も経営者だったのですが、目標は父親のような経営者になること。売上よりも存続し続けることを大事にしたい。それがスタッフやお客様に対する最大の誠意だと思っています」
担当者より
ウイオール様を担当させていただいて6年ほどになります。私が最初にお会いした時は、まだまだ課題が山積みでした。岡本社長はその課題に真摯に向き合い、どんどん会社を良くされています。
問題に向き合う姿勢や経営に対する考え方など、私自身がいつも非常に勉強させていただいており、経営者としてとても尊敬しています。これからも微力ながら精一杯サポートさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。(山尾 祐介)