建設コンサルタントの建設環境部門で起業

「40歳直前の今が最後のタイミングだ」と起業を決断

建設コンサルタントの中でも環境調査や環境影響評価を専門に行う株式会社CEサポート。代表取締役の田中慎氏によると、さまざまな調査や設計、測量を行う建設コンサルタントは20以上の部門に分かれており、CEサポートはその中の「建設環境」の部門を担当している。 起業前も建設コンサルタント会社に16年間勤務していた田中氏は、プロジェクトマネージャー的な立場で業務を統括していた。また、建設環境部門を担当するのに必須となる主要な国家資格をすべて取得し、管理技術者としても腕を振るっていたという。そんな田中氏が起業を決意したのは「自分自身がどこまでできるかチャレンジしたい」という想いだった。
「私が勤務していた会社は、建設環境部門以外の分野が強みでした。そのため、環境調査や環境影響評価といっても、同じような内容の業務ばかり受注するという偏りが発生していたんです」

そうした状況を打破しようと、プロポーザル提案の入札に参加しても、技術的な審査を通過しても実績がないからと失注するケースが頻発していた。
「同じような内容の業務ばかりではなく、多種多様な業務に挑戦したいという想いがありました。あともうひとつ、当時40歳直前だったこともあって『今が起業のラストチャンス』だと考えていたのもあります」

お客さまと一緒に交渉や課題解決まで取り組むのが強み

起業を決意しても相談する人がいなかった。なぜなら建設環境部門の業界で起業している人が、ほぼ皆無だから。その結果、田中氏は書籍を買って独学で学び、自分ひとりで会社設立の手続きを完了してしまった。
「当時は誰も聞ける人がおらず、自分でやるのが最速だと考えてやりましたが、間違いなくFirstStepさんにお願いするのが最速ですよね（笑）。実は経理作業も自分でやるつもりでしたが、こちらはすぐに無理だと悟り、比較的起業家が多い地質調査をメインとしている知人に相談しました。そこでFirstStepや中央会計のことを教えてもらったんです」

独力で会社設立を行ったりと、勉強家の田中氏。ビジネスに取り組む上で最も大切にしているのは「常にお客さまの立場に立って考えること」だという。
「当社は調査のみならず、行政との交渉や近隣住民に対する説明会なども一緒になってお手伝いします。技術者の中には高い技術を持ちながらも、行政やお客さまとの交渉ごとは避けようとする職人タイプの人が多いんですね。当社は、交渉や課題解決の部分まで一緒に取り組む点が強みです」

また、田中氏の人脈を活かして豊富な経験と高い技術を備えた技術者に業務を依頼できるのもCEサポートの強みだ。
「私がプロジェクトマネージャーとして、お客さまに対してワンストップで高いレベルのコンサルティングを提供可能です」

起業する上では『何のために？』が最も重要

起業する人が少ない業界で起業して奮闘する田中氏。これから起業する人へのメッセージをお願いすると「その分野で強い資格を持っていれば、起業が成功するポテンシャルは十分にある」と。
「建設環境部門の業務は、技術士、環境計量士、土壌汚染調査技術管理者などの資格を持っていれば管理技術者として業務をマネジメントできますし、建設コンサルタント会社で働くなら、転職先には困らないほど強力な武器になる資格です。ただ、仕事そのものはサラリーマンでも起業しても変わらないのも事実で、そのせいで起業する人が少ないのかもしれません」

しかし、だからこそ起業する目的が重要なのだという。
「起業すると、本当にいらぬ苦労が増えます（笑）。好きなこと、やりたいことだけをやるのは無理。だからこそ『何のために起業するのか？』が重要になります。お金でもやりがいでも何でも良いのですが、それを明確にしておかないと、仕事のモチベーションを高く維持できませんから。私は起業して良かったと思っています。もうサラリーマンには戻らないつもりで取り組んでいます（笑）」

最後に今後の展開をうかがったところ、もう少し会社の規模を大きくしたい、と田中氏。
「私自身が現場での作業から離れて、営業活動に注力できるぐらいの規模をめざしたい。3〜5人ぐらいでしょうか。ただ、建設環境部門は非常に守備範囲が広い。生活環境系、自然環境系の各分野の専門家が集まり、それを私がマネジメントするというスタイルを社内の社員だけで構成するのがめざすべき理想です。生活環境系、自然環境系の両方をプロフェッショナルなレベルでフォローできる会社をめざします」