デザインもやっていることを伝えるために法人化
化粧品事業と撮影事業、そしてグラフィックデザインや店舗内装デザインと、多彩な事業を行うINDesign株式会社。代表取締役の稲田孝洋氏は、実家が建設会社を営んでいることもあり、建築の専門学校に通い、もともと店舗デザインや内装に興味があったそうだ。
「起業する前は、店舗デザインから施工までを一貫して行う会社や広告代理店などで働いていました。そして2014年、個人事業として化粧品メーカーを立ち上げました」
起業のきっかけは、ずっと化粧品業界で頑張ってきたある女性との出会い。
「最初は私のクライアントとして、起業準備の相談に来られていました。ただ、話を聞くほど面白い人だと思う反面、危なっかしい面もありました。ただ、一緒に起業しようと決めたのには理由があります。困っている人を助けたいというよりも、私自身も化粧品業界に飛び込み、当事者としてコスメ事業の事業デザインに取り組んでみたいという想いがあったんです」
こうして個人事業として化粧品の開発・製造・販売に取り組み始めた稲田氏。すると、それまでの稲田氏を知る人から同じような質問を何度も受けるように。
「起業前に、企画やディレクションを通じて知り合った方々からの『もうデザインの仕事はやらないの?』という質問でした。実はデザインの仕事は、従来と変わらず取り組んでいたのですが『コスメ業界の人』というイメージだったみたいで(笑)。『だったらデザイン会社を立ち上げよう!』と考えたんです」
ビジネスは基本的な部分を大切に
現在は、デザイン事業やカメラマンによる撮影を企画・ディレクションする撮影事業、化粧品事業という3つの事業に取り組むINDesign株式会社。設立当初、法人化はデザインに取り組んでいるというアイコンを確立する手段の1つだったが、もうひとつの意味があった。
「実家が建設会社を営んでいることもあり、自分が作った会社の代表取締役になれば、基本的には死ぬまでその肩書きは外れないですし継続させることが使命になることは理解していました。この事業を一生の仕事として取り組んでいくという『腹のくくり直し』という意味合いもありましたね」
FirstStepや中央会計の存在を知ったのは、起業前に働いていた会社が参加していた関西活性化プロジェクトで。その後、起業を決めてから実際に会って依頼を決めたという。
「月額金額も安く、スタッフの皆さんの人柄が良かったのが一番の決め手になりました。今では、私自身が経営する上で必要なお金に関する最低限の知識を持ち合わせていないことに気づき、いろいろと教えてもらっています」
続いて化粧品、ビジネスに取り組む上で大切にしていることを聞いた。
「嘘をつかない、挨拶はきちんとする、約束は必ず守る……そんな基本的な部分を大切にしています。スタッフには『マイ・ストーリーを見つけ、それを実現するために会社をうまく利用して欲しい』と話しているんですよ。私以外のスタッフは全員女性なので、彼女たちが長く働き続けられる仕組みを用意するのが私の使命だと考えています」
今の時代にふさわしい起業の方法やタイミングがあるはず
これから起業しようとする人へのアドバイスをお願いすると、「昔ほど独立や起業は特別なことじゃなくなったと思います」という言葉に続いて次のような話が。
「昔ながらの弟子入りや修行といった方法で独立起業をめざすことは決して悪いことはないですが、今の時代にふさわしい起業の方法があると思いますし、今後それを若い人たちがどんどん生み出していくのではないでしょうか。もしかしたら、今の時代は起業というスタイルじゃないのかもしれない(笑)」
ただ、稲田氏自身は起業したことで会う人が大きく変わったと感じている。
「代表取締役という肩書きによって、入ってくる情報も少し変わったように感じます。同時に、サラリーマン時代の自分がいかに甘い考えだったかを痛感しましたね(笑)」
最後に、今後の目標を聞かせていただいた。
「化粧品、写真撮影、デザインという3つの事業軸をフル活用した仕事に取り組みたい。それが当社最大の強みになるはずですから。いずれは各事業を分社化できるぐらいまで成長させたい。それが今のスタッフの人間的成長にもつながると思っています」
担当者より
稲田様とは法人を設立する前の個人事業主のころからお世話になっております。様々なことにチャレンジし、実現できたもの、残念ながらうまくいかなかったものもありますが、その行動力にはいつも影響を受けて見習わせていただいております。法人化もそのチャレンジのひとつですが、稲田様の経営判断の参考になれるようなアドバイスを行わせていただき、ともに成長していければと思います。 (澤 和樹)