経理事務代行で起業

事務職でも『雇われない働き方』があることを広めたい

経理を中心とした事務代行やセミナーを行う株式会社ていと。代表取締役の庄司利紗氏によると、帳簿作成や資金繰り表の作成といった経理全般の依頼が多いという。
「経理担当者が退社してしまったり、経理未経験者が経理担当になったり、経理担当者を置いていない企業様などにお声掛けいただくことが多いです。そして、お声掛けくださった企業様には『経理とは経営者の役に立つ情報を提供すること。同じ目線の高さで寄り添う、パートナーであること』という考え方を軸として、経営者の経理や事務に関する、あらゆる困りごとを解決するというスタンスでありたいと考えています」

もともとアパレルの販売員をしていたが出産を機に退職。団体職員として一般企業の経理指導を経験したことが経理の仕事との出会いだった。
「店舗や中小企業が経理作業や決算作業で困っている状態を立て直し、正しい経理作業が行えるようにサポートするという少し特殊な仕事でした。多くの事業所の経理を立て直すという仕事の経験は、一般企業の経理とは少し異なるスキル。それが今の事業に役立っています」

その後、一般企業の経理責任者に転職し、グループ決算や業務体制構築運用といった業務を担当。しかし2人目の出産と時を同じくしてご主人が独立したことでフルタイムで働くことが困難となり、ご主人の事業の事務関係を手伝うことに。
「しばらくすると主人の知り合いや私を知る人たちから、『うちの経理を見てほしい』という依頼が舞い込むようになりました。ひとつお手伝いし始めたら、次第に口コミで増えていったんです」

依頼が増えて働くことの楽しさを感じつつ、庄司氏の中に新たな考え方が芽生え始めた。
「周囲には子育てのために仕事を辞めた人が結構多かったのですが、私自身は子育て中も働けていた。そこで、私のように子育て中や介護中といった状況下でも、正社員やパートとは異なる『雇われない働き方』が存在することを広めるべく、埋もれている女性達のスキルと労働力を、事務でお困りの会社さん達でシェアする事業に取り組みたいと考えました」

信用を得る手段として法人化を実行

法人化は働きたい女性たちが登録する際に、少しでも信用してもらうための手段だった。
「大企業ではないし、私にはネームバリューもない。登録してもらう働きたい女性たちに、信用を提供する唯一の方法が法人化だったんです」

中央会計に自社の税務を依頼したのは、あるイベントでオオサカンスペースの管理人である大崎弘子氏と出会い意気投合したのが縁で、大崎氏が代表取締役を務める株式会社Kaeruの経理作業をサポートしていたことから。
「もともと中央会計のスタッフの方々も知っていましたし、セミナーやKaeruの経理作業のために中央会計とオオサカンスペースが入居するビルに来る機会も多かった。私としては『お願いしない理由がない』感じでしたね。登録者との面談や教育サポートなどのシーンで使えそうな無料セミナールームも魅力でした」

「事務や経理の仕事は、正社員として会社に常駐していなくても可能」と語る庄司氏に、ビジネスで大切にしていることをうかがった。
「法人化して事業を本格的に始める時から、子育て中のお母さんや雇われない働き方を望む女性に働く機会を提供することで、笑顔のお母さんを増やしたいという想いがありました。なぜなら、お母さんを笑顔にすることが日本の未来を良くすることにつながると思っているので。企画やイベントのアイディアを検討する時も、これを判断基準にしています。女性の働き方の多様性に寄与できることかどうか、この軸をブレないようにすることを大切にしています」

より多くの働きたい女性に『雇用されない働き方』を提供したい

「女性たちの各ステージにおいて、最適な働き方を選択できるよう選択肢を増やすとともに、当社がそのひとつになりたい」と語る庄司氏。これから起業しようと考える人へのアドバイスをうかがった。
「起業して事業を軌道に乗せるには、『行動すること』と『継続すること』と『諦めないこと』という3つがすべて。まず、多くの人は最初の『行動すること』ができませんし、成功した人に話をうかがうと、皆さんこの3つだけは必ず実行している。この3つなくして起業は絶対に成功しないと思います」

今後の事業展開について聞くと、第一には事業の拡大、登録者の増大をめざしていきたいという。そして、いつかは実現したいと考えている夢を一歩ずつでも進めていきたいという。
「さまざまな立場や境遇の女性たちが、さまざまな目的を持って利用できる場所を作りたい。みんなでさまざまな情報や仕事を共有し、さまざまな問題を解決したり回答が得られる場所です。そんな女性のためのシェア施設を作れたらいいな、と思っています」