お好み焼き屋で起業

自分でも想定外だった『お好み焼き屋での起業』

奈良県橿原市で『お好み焼 まん房』を2店舗展開する吉村賢治氏。『お好み焼 まん房』はお好み焼きをはじめ、焼きそば、もんじゃなど、いわゆる“粉もん”を提供するお店として、地元の人々に愛されている。吉村氏は、若い頃から起業したいという漫然とした想いを持っていた。その実現は、偶然知り合ったお好み焼き屋のオーナーが入院することになり、店を手伝うことから始まった。
「当時は薬品関係の販売員としてサラリーマン生活を送っていました。でも、別の仕事がしたいとその会社を退職すると同時に声を掛けられて。最初は次の仕事が決まるまでのお手伝いのつもりでした。でもオーナーが退院して一緒に働くようになり、ある日『お好み焼き屋で独立したら？』と言われたんです。正直、その瞬間までお好み焼き屋での起業が頭の片隅にすらなく、面食らいましたね（笑）」

だが、起業するなら自分が作った物を自分が決めた価格で売る商売がしたいと考えていた吉村氏。子どもの頃から料理を作って家族に振る舞い、おいしそうに食べる姿を見ることに喜びを感じていたことを思い出した。
「これもなにかの縁だと考えて、お好み焼き屋で起業しようと決意しました。ただオープンするまでは、店舗内を見るたびに『本当にこの空間をお客さまで埋めることができるのか？』という不安とプレッシャーが凄かったのを覚えています」

店舗運営の中心は『人の想い』ありき

オープン当初から経理関係は税理士にサポートしてもらっていたが、吉村氏の中でしっくりこない点があり、一度契約を打ち切ることに。だが、確定申告などの経理作業は苦手なため困っていた。そんな時、経理代行会社から紹介されたのが中央会計だった。
「中央会計の皆さんに感じたのは、顧客と自分たちをフラットな視点で見る姿勢。その姿勢が、中央会計に依頼する決め手となりました。実際にお願いしてみるとチャットワークで気軽に質問できたり、レスポンスが早かったり。顧客に寄り添う姿勢が随所に感じられる上、大事な場面ではしっかり連絡を入れてくれるなど、適度な距離感に満足しています」

ビジネスに取り組む上で大切にしていることとして『経営理念』を挙げたのは、店の中心は『人の想い』であると考えているから。
「実は今の経営理念は、2つめの経営理念なんです。最初の経営理念も10年ぐらい掲げていましたが、ずっとしっくりこなかった。結果的に社員からわかりにくさを指摘されて変更を決意しました」

そして、再度自分の中で問い続けた結果、湧き出てきた新たな想いを経営理念とした。
「現在は『ありがとうの溢れるお店づくり』を経営理念として掲げています。あらゆる人々に対し、感謝の気持ちに満ちた『お好み焼 まん房』でありたい。どんなに優秀でも、この理念に合わない人は必要ないという想いで事業に取り組んでいます」

働くスタッフが成長できる場であり続けたい

これから起業しようと考える人へのアドバイスをお願いすると、経営理念を大切にする吉村氏とは真逆に思える『起業の動機は何でも良い。行動することが大切』と。
「私も最初は『お金をもっと儲けたい』が、一番大きな動機でした。でも不思議なことに、事業を進めていくと、お金儲けと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なことが見つかるかもしれません。経営理念を考えるのはそれからで十分」

最初から立派な経営理念を持とうとすると逆に失敗する、と吉村氏。
「徐々に、お金と同じぐらい、もしくはお金以上に大事なことが見えてくる。私はそれが『喜び』だった。それが見えてきて初めて、経営理念が生きてくると思います。頭でっかちで起業しても、必ず失敗しますから」

それでも経営者は、ここ一番ではひとりでも物事を進める覚悟が必要だ、とも。
「スタッフは経営者を見ています。言行不一致になっていないか、すぐに見透かされる。だからこそ、常に言行一致を意識し、想いを持って行動しないとスタッフはついてきてくれません」

最後に今後の展開についてうかがった。
「現在2店舗を展開していますが、まずは5店舗まで増やしたい。そのために、2019年ごろには3店舗目をオープンしたい。そうすることで、スタッフの皆さんが活躍できる場を増やしたい。加えて、これまでも200人以上のアルバイトさんが、働きながら成長して羽ばたいていきました。これからも『お好み焼 まん房』は人が成長できる場であり続けたいですね」