Web制作業で起業

オープンソースCMSのサポート＆普及のために起業

Webサーバ上で直感的にWebサイトの運営管理ができるCMS『concrete5』。このCMSの名前を社名に冠したコンクリートファイブジャパン株式会社は、アメリカで生まれた『concrete5』の日本語訳を進めるボランティアコミュニティ活動を行う中心メンバーが集まって生まれた。
現在は『concrete5』を用いたWebサイト制作や運用サポートを行いながら、普及活動やWebクリエイターの支援を事業としている。代表取締役の菱川拓郎氏に法人設立の経緯をおうかがいした。
「私たちが『concrete5』のコミュニティ活動を進める中で、多くの企業から『導入してみたいが何となく不安』、Web制作者からは『名前は知っているがなかなか踏み切れない』という声を数多く聞いていて、解決する必要性を感じていました」

そこで、アメリカにある『concrete5』を開発した会社に、運用サポートや普及活動を要望。すると、その答えは意外な内容だった。
「彼らからは『アメリカのサポートで手一杯だから日本まで手が回らない。君たちがやってくれないか？』と。完全に無茶ブリやなぁ、と（笑）」

それでも菱川氏と東京、名古屋にいるコミュニティの中心メンバーは、Skypeで話し合いを重ねた。
「半年間ほど議論を重ねて、我々が日本での運用サポートや支援をすることに決め、同時にコンクリートファイブの名前を社名に冠して法人を立ち上げることも決めました」

日本初の起業スタイルを成功させる！

法人化の手続きは菱川氏が担当することになり、インターネット検索で見つけたのが、FirstStepが提供する『会社設立できるかな』だった。
「『会社設立できるかな』で登記書類を作成し、手続きも自分で行いました。ただ、経理面はプロに頼む必要があると考え、FirstStepに相談してお願いすることにしました。ITに詳しく、ITイベントにも協賛されていたので良いかな、と。スタッフも同年代ですし、チャットワークでやりとりできるのは助かっています」

法人化してみると、起業前の想定と異なる出来事が少なくなかったという。
「お金の管理も個人事業主時代とは異なりますし、会社経営って大変だな、というのが正直な実感ですね（笑）」

代表取締役となった菱川氏自身の意識もまた、法人化を経て少し変わったという。
「例えば『日本を元気にする』という言葉が身近になった気がします。事業の成長が社会にリンクする感覚を感じるようになったというか」

ただ、変わらない部分もある。
「私たちがコンクリートファイブジャパン株式会社という会社を作っても、『concrete5』コミュニティの一員に変わりありません。ユーザーの一人であること、コミュニティに貢献することを意識しながら行動していきたい。日本ではオープンソースCMSのコミュニティメンバーが、コミュニティとして起業した事例は極めて希です。だからこそ注目されましたし、責任もある。『concrete5』を安心できるオープンソースCMSに育てていきます」

誰もが自分で魅力的なWebサイトを作れる世界に

前職の制作会社で、Webエンジニアとして働いている頃から起業を考えていた菱川氏。
「起業自体は、案外何も知らなくてもできるもんです。周囲の人に教えを請えば、たいてい教えてもらえますから。私自身、起業に関する本を読んでもさっぱりでした。Web技術系の本ならスッと入ってくるんですが（笑）」

本などで知識を深める時間があれば、人のつながりを増やすことに費やした方がずっと役に立つという。
「私は神戸にあるコワーキングスペースを訪れた時、『こういう場所があるなら自分も独立できる』と直感的に感じました。お決まりの異業種交流会じゃなくても、同じような仕事をする人たちが集まる場所に行けば人脈は作れます」

最後に、今後の展開についてお話をうかがった。
「コンクリートファイブジャパンが目指すのは、誰もがオープンソースで簡単に自分のサイトを持てる世の中。Web制作をお金の掛かる高級品にしたくない。さまざまなな才能を持った人が、多様で魅力的なコンテンツを作れたら、Webの世界はさらに面白くなると思うんですよ。『concrete5』を使ってくださる人を増やすことで、Webの世界を、さらには世の中をもっと面白くしていきたいですね」