カーフィルムアンテナの販売で起業

お客様からのひと言で起業を決意

医療用、工業用、自動車産業などで使用されるさまざまなフィルムの二次加工に加え、カーフィルムアンテナやiPhoneグッズのインターネット販売などを行う株式会社ベステック。代表取締役の細田直己氏は、もともと現業のひとつであるフィルムの二次加工の会社に勤めていた。
「リーマンショック後、会社は私たち社員への給与も滞る状態でした。ある時、そんな状況を知ることとなったお客様から『早く独立しなさい』というアドバイスをいただいたんです。そのひと言をきっかけに、何となくモヤモヤしていたものが晴れていったのかもしません」

結果的に、会社は社員を解雇した後に倒産した。
「私が会社を離れた直後、お客様から、私と取引したいというご要望をいただいたんです。そこで会社を設立しようと考えました。すると、早急に素材調達や加工を行い、製品を出荷しなければならなくなったんです。最初は自分で会社設立も行うつもりでしたが、そんな余裕がなくなってしまって（笑）」

そこで細田氏は、インターネット検索で見つけたFirstStepに連絡、事務所を訪問した後に会社設立を依頼することにした。
「自分で設立するよりも安いことと、誠実でフィーリングが合うと感じたのでお願いしました。そして、実質10日ほどでで会社設立をしてくださったんです。お客様のために設立を急いでいた私にとって、これはとても嬉しかったし、助かりました」

資金繰りに細心の注意を払う

最初はフィルムの二次加工を行う製造業部門だけでスタートし、しばらくしてカーフィルムアンテナやiPhoneグッズをインターネット上で販売するネットショップを立ち上げたベステック。最初の起業直後よりも、ネットショップ立ち上げ直後の方が大変だった、と細田氏。
「ネットショップはあまりお金が掛からないイメージがありますが、今は広告宣伝費をしっかり掛けないと売れません。軌道に乗せるには、半年以上掛かると思っておいた方が良いのではないでしょうか。私のネットショップも進化の途上。さらに精度を高めていく必要があると考えています」

そんな細田氏が、起業して最も変わったのは『お金に対する考え方』だという。
「製造業もネットショップも、仕入れと売上の間には大きなタイムラグがあります。常に資金繰りを意識しておかないといけない。資金がショートしないよう、常に細心の注意を払っています。それはもうヒヤヒヤしてますよ（笑）」

現在は正社員1名に加えてアルバイト、パートが在籍している。経営者として、しっかりとスタッフを守りたいと考えている。
「起業して『責任』という言葉に重みを感じるようになりました。お客様に対する責任はもちろんですが、雇用する責任、彼らやその家族の生活を守る責任。起業前と後では、扱う商品やお客様など同じ部分も多いのですが、内面的な意識は確実に変わりましたね」

起業において、『芸は身を助ける』

これから起業しようとする人へのアドバイスをお願いすると、『しっかりお金と向き合うこと』という言葉とともに次のようなアドバイスをいただいた。
「お金に縛られるのは良くありませんが、しっかり向き合うことは必要です。企業を維持・発展させるために必要な物ですから、起業は自分が予想する2倍程度の費用が掛かると思っておいた方が良いですよ。本当にお金が減るスピードは速いですからね（笑）」

また、趣味や得意なことを仕事に生かすことが大切だという。
「『芸は身を助ける』ではありませんが、自分が備えている能力を仕事に生かせばモチベーションも上がりますし、メリットは大きいと思います。私はカメラが趣味だったのですが、ネットショップの商品撮影に役立っています（笑）」

最後に今後の展開についてお話をうかがった。
「ネットショップでの自動車用フィルムアンテナやカー用品、iPhoneグッズなどの品揃えを増やしていきたい。当面はネットショップの売上を安定させることに注力するつもりです。今後は、人のつながりを活かしてプロフェッショナルと協力し、他社と差別化できるショップにすることを目指します」