消滅する部署からお客様を引き継いで起業

「お客様を困らせたくない」と考え、準備ゼロで起業

リスティング広告やSEOをはじめとしたさまざまなインターネット広告媒体を取り扱う株式会社エンタークライス。代表取締役の西山清和氏は、大手IT企業のネット広告代理事業部門の営業マンだったが、変化は突然やってきた。
「会社が事業集約を進める中で、広告代理事業の廃止を決めたんです。今後は、今のお客様に多大な迷惑が掛かることは自明でした。そこで『お客様に迷惑を掛けたくない。私が独立してお客様を引き継ぎ、迷惑を最小限にしたい』と会社に相談すると、快くOKしてくださり、私の独立起業が決まりました」

周囲から見れば、最高の状態で起業することになった西山氏。だが、自身の心には大きな不安が渦巻いていたという。
「2つ不安がありました。ひとつは引き継いだお客様が、起業したての小さな企業と取引していただけるのかという不安です。そしてもうひとつは起業準備をほとんどしていないという不安。営業には自信がありましたが、起業や経営の知識はほぼ皆無。自分に経営ができるのかという不安がありましたね。それでも今起業すべきだ、という想いは揺るぎませんでした」

結果的には、引き継いだお客様の9割以上が取引を継続、起業や経営についてはFirstStepとの出会いがあり、どちらの不安も杞憂に終わったそうだ。

『人と人のつながり』はフェイス・トゥ・フェイスから！

FirstStepとの出会いは、インターネットの検索を通じて。
「東京事務所もあるし、離れた大阪にある会社という不安はありませんでした。それよりも、Webサイトの作り込みやSEO、リスティング広告を見て、非常にITに力を入れていることが分かり、『ここなら事業を理解した上でサポートしてもらえるんじゃないか』と感じたんです。会社設立もほぼすべてお任せで、しかも安かった（笑）」

起業しても、それまでの営業スタイルやお客様との接し方に変化はないと語る西山氏だが、自身の考え方は少し変化したそうだ。なかでも判断速度については大きく意識が変わった。
「起業すれば、すべてを自分自身が決めることになります。しかもなるべく早く決めねばなりません。最近、経営者には瞬間の判断力が必要だと実感しています」

ビジネスにおいて大切にしていることをたずねると、『人と人のつながり』という言葉とともに、ひとつのエピソードを話してくれた。
「私の仕事は、資料請求から発注まで、すべてネット上で人を介さずに行うこともできます。しかし、そんなインターネット上だからこそ、フェイス・トゥ・フェイスの場を大切にしています」

そんな顔を突き合わせての関係構築を大切にしてきた西山氏。実は年に一回、お客様が集まるBBQキャンプを主催しているという。
「お客様は知らない者同士。でも、このBBQキャンプで出会い、私の知らないところで多くのビジネスが生まれているようです。そういった様子が最高に楽しくて面白い。もっとたくさんの方に来ていただけるよう仕事を頑張らないと（笑）」

経営の安定を目指し、新事業にも着手

経営者にとって、経営の安定は最も重要で最も難しい課題だ。西山氏も起業後、それを痛感していた。
「広告は繁忙期や商材などによって売上の波がとても大きく、それは独立しても同じ。企業がその波を乗り越えるためにも、複数の事業の柱が必要だと考えるようになりました。そこで、我々の強みを洗い出して始めたのが、ホームページ制作事業です」

このホームページ制作事業、起業したばかりの起業家をターゲットとしているが、まさに自らの経験から生まれた事業だそうだ。
「起業すると早急にホームページが必要になりますが、他にも封筒や印鑑など揃えるべきアイテムは多岐にわたります。ワンストップで全部揃えられるサービスがないかと探したのですがなかったため、私が自分で作りました。それが、当社が新たにスタートしたサービス『起業応援パック』です」

今後は『攻め』を意識して事業を展開していきたいという。
「仕事は苦しみながらやるよりも、楽しみながらやりたい。そのためには守るよりも攻め続けるべきだと。5年後には10人ぐらいの規模を目指したい。楽しみながら仕事をしてもらうために、当社で働く社員がやりたいと思うことを事業化してサポートする、そんな企業になりたいですね」