音響や制御のシステム開発・製造で起業

クライアントの期待と信頼に応えたいと起業を決意

特型機器やAVシステム、制御システムの設計や製作、販売を行う合同会社ネオテック・システムは、起業前に会社の同僚だった代表業務執行社員の辻本哲宏氏（写真左）と業務執行社員の平井利明氏（写真右）の二人によって設立された。まず最初にネオテック・システムの事業内容について、辻本氏におうかがいした。
「特型機器とは、クライアント様のニーズや要望に応じて製作するオーダーメイドの機器です。当社ではソフトとハードの両方を設計、開発することが可能です。たとえば、大学の講義室や野球場内の音響システムや制御システムの設計や開発、それに用いる特型機器の開発や製造などを行ってきました。加えて現在は、大学の講義システムの運用サポートを担当するスタッフの派遣事業も行っています」

二人の起業ストーリーは、前職の会社で働いている時に、クライアントからある案件をすべて任せたいという依頼を受けたところから始まった。
「エンジニアとして、とても魅力的な仕事だったことと、何よりクライアント様が我々を信頼しての依頼であることをヒシヒシと感じたんです。絶対にこの信頼と期待に応えたいと考えたのですが、会社に戻って確認すると『会社としてその依頼を受注するのは無理』という答え。そこで、二人で話し合いを重ね、起業しようと決めました。今思えば、勇気を振り絞って決断した、という感じでしたね（笑）」と辻本氏。

平井氏によると、二人の想いは一致していたそうだ。
「二人ともクライアント様の信頼と期待に応えたい、エンジニアとしてやりたいことをやるには起業しかない、という想いが一致していました。これが決め手になりましたね」

思わぬ壁が……唯一前向きな提案をしてくれたFirstStep

起業を決意した辻本氏と平井氏。だが、起業までに思わぬ壁が待ち受けていた。辻本氏は当時のことを鮮明に覚えていた。
「起業準備について学ぼうと大阪産業創造館で開催された起業セミナーなどに参加した時のことです。そこで、起業に至る経緯や状況をお話しして相談しようとすると、『たった一社の仕事、それも担当者の言葉を頼りに起業するなんてリスクが高すぎる』と言われました。他にも多くの方からそう言われ、本当に起業は無謀なのかと悩みました」

そんな時に、辻本氏がFirstStepの看板を発見した。
「起業の相談ができると書いてあったので相談してみると、とても前向きに相談に乗ってくれたんです。どうすれば成功するかという視点から考えてくれる人は、FirstStepさんが初めてで……。しかも、起業リスクを下げる方法の1つとして、低コストで法人設立ができる合同会社を提案してくれました。我々はてっきり株式会社しかないと思っていたんです。これはもうお願いしようと（笑）」

こうして設立された合同会社ネオテック・システムは、今では営業マンがいないにも関わらずクライアントからの問い合わせが絶えない。営業マンがいなくても仕事が次々と舞い込んでくる秘訣を平井氏にたずねた。
「それはもう人と人のつながりがすべて。二人とも営業経験がないエンジニアですし、扱うのはオーダーメイドの製品。ですから、打ち合わせでのちょっとした雑談の中で、お客さまが別件での悩みや課題について相談してくださり、その案件が次の仕事につながったりします。『ネオテック・システムなら解決してくれるかも』と期待して相談してくださっているなら、これほど嬉しいことはありません」

システムの枠を超え、製造業の仲間入りを目指す

クライアントの依頼をエンジニアの技術で実現し続ける辻本氏と平井氏の二人。起業する上で必須だと思われる要素について質問すると、二人とも『興味のアンテナを高く保つ』という答えが返ってきた。
「世の中の流れや流れの向きに興味を持ち続けることが必須ですね。それが人と人のつながりを生むきっかけにつながりますから」と辻本氏。
「二人とも広く浅くが好きで、『知りたがり』『触りたがり』の精神が旺盛。でも、最も大切なのは実際に触ったり、買ったり、見に行ったりする行動力かな」と平井氏。

最後に辻本氏に今後の展開についておうかがいした。
「今後は、我々が起業時にやりたいと考えていた特型機器の開発や製造、さらには自社製品開発の取り組みに力を入れていきたい。将来的に目指すのは、『業種は何ですか？』と聞かれたら『製造業です』と答えられるところ。我々二人の性格は正反対なのですが、目指すべきところは一致していてブレることがありません。二人で経営する強みを最大限に発揮して、やりたいことをやれる会社に育て、新しい製造業の姿を目指します」