旅費の足しにしようと衣装の買い付け&販売をスタート
株式会社ベナムイルズは、ダンスやストリートカルチャー、エンターテインメントに関わる事業に取り組む会社だ。『VIPダンスショップ』をはじめとするECサイトや実店舗におけるダンス用衣装の企画・製造・販売のほか、ダンスイベントの開催、ダンサーの紹介やイベント撮影なども行う。代表取締役の宮本美耶氏は、自らもプロダンサーとしてさまざまなアーティストと共演してきた実績を持つ。ともに事業を立ち上げたパートナー・森本麻由氏も、宮本氏と同じダンスチームで活動していた現役のプロダンサーだ。
「1996年からプロダンサーとして活動する中で、定期的にアメリカを訪れて本場のワークショップに参加したり、踊りを学びたいと思っていました。その時『どうせならアメリカでダンスウェアを買ってきて日本で売れば旅費の足しになる』と考えたのがきっかけです」
そこで、西心斎橋に10坪の空間を借りて店舗をオープンし、オリジナルブランドも立ち上げた。すると、パートナー・森本氏のセンスが抜群だったおかげで商品は売れたが、店はずっと赤字だった。それでも店舗運営はあくまで副業という意識があり、定期的に日本とアメリカを往復しつつ店を運営していた。 だが2010年、宮本氏はプロダンサーを引退し、ほぼ時を同じくして自らの妊娠や出産も重なることに。
「この時ですね、本気で店舗運営や経営に取り組もうと決意したのは……。本気の決意を表現するべく法人化しました。今思えば、法人化するまでは『経営ごっこ』をしていただけでした(笑)。この時期からWebスタッフを採用してECサイトをリニューアルし、POSを導入して在庫管理、販売管理を徹底した。それでようやく事業が黒字に転換したんです」
他人を思いやる気持ちが最も大切
事業が軌道に乗り始めると、会社を成長させてくれるスタッフも集まり始めた。一緒に起業した森本氏は現役プロダンサーとして宣伝や広報を担当し、経理や財務に強いスタッフや高い技術を持つWebデザイナーが入社し、宮本氏は事業拡大戦略の構築に専念できる環境が整っていった。
「本気で経営に取り組むと、赤字だった会社が黒字になって成長し始めた。経営は努力すれば結果がついてくることがわかって嬉しかったですね。その後も、お客さまのご要望に応える形でエンタメ部門を創設するなど、事業拡大に取り組んでいます」
そんな宮本氏に、ビジネスに取り組む上で大切にしていることについてお話をうかがった。
「一番は思いやり。特に当社は森本と2人で共同経営なのでお互いを信頼して思いやる、これがないとまず成り立ちません。二番目は、よくスタッフにも話すのですが、まずは自分のために仕事をすること。明確な目標を持って自分のために頑張ってほしい。そして三番目は、人のために頑張る。人は家族や仲間、お客様など、身近にいる大切な人のために頑張って欲しい。あくまで『自分のため』が最優先だと話しています」
失敗は成功のもと。失敗しないと成功しない!
これから起業する人へのアドバイスをお願いすると、「失敗は成功のもと、ですね(笑)」という答えが。
「成功しかしない人は絶対にいません。必ず失敗するし、その失敗が力になる。逆に、失敗を恐れて安全な方ばかり選んでいると成長できません。失敗を恐れずにチャレンジすることが必要です」
経営者の視点から考えても、スタッフは失敗を恐れないでほしい、と宮本氏。
「部下から『失敗するかもしれないけど、やってみても良いですか?』なんて言われたら、上司としてはこんなに嬉しい言葉はありません。結果的に成功か失敗かなんて関係ない。挑戦したことがもう成功なんです」
そう語る宮本氏自身も、ふと気がつくと失敗を恐れてしまっていることがあるという。
「ふと我に返ると無意識に守りに入っていて『失敗はしてないけど成功もしてないやん!』と思う時があります。失敗を恐れていては、何事も成功しないんでしょうね」
最後に今後の展開をたずねると、即座に「海外進出」という答えが返ってきた。
「ダンスの本場であるアメリカ市場を中心とした英語圏にビジネスを展開したい。まずはECサイトを中心に海外進出を目指すことになるでしょう。ゆくゆくは当社で主催するダンスイベントなどを海外で開催するなど、ダンスを通じて日本の『Cawaii!』を発信したいですね」
担当者より
宮本社長、森本社長が、プロダンサーとして活動されていたダンスチーム「ベナムイルズ」は、よく耳にしておりました。担当させていただいた時にまさかと思いましたが、本当にあの「ベナムイルズ」だったとは……。
また、社長のお二人がとても明るい方で、ダンス文化をとても愛している気持ちが伝わってきます。
今後も精一杯、会社の発展に貢献できるよう私自身、精進せねばと日々思います。(木下 彰久)