クラウドファウンディングで活動資金調達
「被害に遭う前に痴漢を防ぎたい!」という切実な思いから誕生した『痴漢抑止バッジ』の制作や販売、痴漢抑止活動のサポートや講演などに取り組む一般社団法人痴漢抑止活動センター。代表の松永弥生氏は、個人事業主としてライターの仕事をしながら、痴漢抑止バッジ普及のために東奔西走の毎日を送っている。
「もともとは、小学校時代の同級生の娘さんが痴漢被害に遭って困っている、という話を聞いたところから始まります。娘さん自身は自分で作ったカードを付けていましたが、誰も傷つけずに痴漢被害者や冤罪、加害者すら生まない良いアイディアだと思いました。そこで、もっと付けやすい缶バッジ化を提案して作ったのが始まりです」
缶バッジの制作資金や活動資金をクラウドファウンディングで調達するなど、その活動は話題を呼び、多くのマスコミなどにも取材された。その結果、200万円以上の資金調達に成功した。
「缶バッジのデザインはクラウドソーシングを使って募り、それを一般投票の結果を参考にして、審査員が選出し缶バッジ化しました。最初は困っている周囲の人に配って終わりにするつもりでしたが、一回で終わりにしてはいけないと思い、活動を継続的に行うためにも社団法人を立ち上げることにしました」
現在、缶バッジはインターネット上のほかスーパーマーケットの店舗でも販売している。また、警視庁をはじめとした全国の警察と連携し痴漢抑止キャンペーンのサポート、協賛企業の募集や講演活動などを団体の主な活動としていく。
活動の社会的意義を表現するべく一般社団法人を選択
法人化は、先述の活動を継続的に行う意思表示に加え、将来の事業展開も考えていた、と松永氏。
「警察や鉄道会社で採用してもらい、取引するには個人ではダメだと思ったんです。また、ソーシャルビジネスなので、その想いが少しでも伝わるようにと考えて一般社団法人を選択しました」
FirstStepは松永氏自身がオオサカンスペースに所属していたこともあり、その存在は以前から知っていたそうだ。FirstStepに団体設立を依頼したのはごく自然な流れだったという。
「オオサカンスペースで相談したら、『それはFirstStepさんに相談したら良いと思うよ』というアドバイスをもらいました。また、メンバーの中にもFirstStepで会社設立した人が多くいるので、特に不安もありませんでした」
FirstStepも中央会計も、ITツールでのやりとりがメインで、非常に利便性が高いと感じているそう。
「外出が多いので、電話ではなく可能な限りfacebookやLINE、チャットワークなどで連絡を取り合えるので助かっています」 現在、松永氏自身が最も力を入れているのが、缶バッジのデザインコンテストだ。『痴漢抑止バッジデザインコンテスト2016』は、デザインを学ぶ学生にアピールして実施。35校から79点の作品応募があった。 「人気の高い作品を製品化しますし、今年はあべのハルカスで表彰式を実施しました。今後は事前告知を強化し、さらに多くの学校や学生の参加をめざします」
ここまで、学生の参加を増やそうとするのには、松永氏のある想いがある。
「デザインを学ぶ学生さんは、将来デザインで社会を変える力がある人たち。彼らや彼女らが痴漢被害や性差別の知識を持っていてくれれば、将来情報発信する立場になった時、未来を変える大きな力になると信じています。だから一人でも多くの学生さんに、コンテストに参加してもらい、性犯罪について考える時間を持ってもらいたいのです」
バッジデザインコンテストの10年継続開催をめざす
「痴漢抑止活動」という社会的意義のある活動に取り組む松永氏。目下の課題についてうかがった。
「やはり活動を継続していくためには資金が必要です。いかにして活動に必要な資金を確保していくか。缶バッジの販売だけでは厳しいのが正直なところです」
現在は、実質的な活動は松永氏が一人でしているが、今後は仲間の手を借りることでこの課題を解消していきたいという。
「1年間活動して感じたことは、一人でやれることは限界があるということ。ニュースレターやホームページの充実なども、やりたかったができませんでした。仲間の手を借りながらこうした活動をしっかり行い、企業からの協賛などにつなげていきたいですね」
クラウドソーシングなどを活用し、手弁当のボランティアではなく、仕事として手伝ってくれる仲間を増やしていきたいと語る松永氏。
「クラウドファウンディング×クラウドソーシングなら、自宅で子育て中の女性でもパソコンの前から社会問題の解決に参加できるかもしれない。女性の社会参加と親和性が高い起業スタイルだと思います」
最後に、今後の展開について話をうかがった。
「電車内の痴漢問題って、100年前から存在してずっと解決されていないんです。それを学生のデザインが解決するなんてスゴいことですよね。それを実現するためにも、『痴漢抑止バッジデザインコンテスト』を10年間継続開催し続けたいですね」
担当者より
一般社団法人痴漢防止活動センター様は、非常に社会的意義のある「痴漢抑止」をテーマにして起業をされております。ただ、社会的意義のある活動を継続していくためにも、事業として資金を回していく必要があります。
税務会計だけでなく、資金調達など様々な面でサポートさせていただければと考えております。(辛島 政勇)