理想の働く環境を作ろうと起業

今しかできない仕事をしようと、憧れの美容師に

阪急電鉄北千里線の豊津駅から徒歩2分の場所にある美容室『velvet』は、「通うたびにキレイになる美容室」がコンセプト。オーナースタイリストの下西健太氏は、美容師として12年以上のキャリアを誇る。
「もともと中学生の時から髪を切ってもらうのが好きでした。美容師という仕事が、カッコイイ大人になるチケットのような気がして憧れの仕事だったんですよ」

高校卒業後は介護業界に就職し、楽しみながら仕事に取り組んでいた。しかし、働く中である想いが頭の中に渦巻くように。
「働いている同僚の皆さんが、私の母ぐらいの年齢の人が多くて。『介護の仕事は年を重ねてからでもできる。ならば、今しかできない仕事をしよう』という想いが浮かんできた。そんな想いと一緒に頭に浮かんだのが美容師の仕事だったんです」

一念発起して介護の仕事から離れ、美容室に勤務しながら通信教育で美容師資格を取得。美容師として約12年で3店舗に勤務し、スタイリストとしてはもちろん、店長などマネジメントの立場も経験した。
「美容師として働く中で感じたのは、やりがいは大きいが安心して働ける環境が整った美容室は非常に少ないということ。長く働きたいと思ってもらえる、安心して働ける美容室を自分で作りたいと思って独立を決意しました」

ゆとりのある接客で、仕事が楽しくなった

会計や税務が苦手という下西氏は、独立当初から苦手なことはプロに任せる選択をした。
「独立前に働いていた店では、店の会計は税理士さんが入り、各美容師は自分で確定申告するスタイルでした。この当時から税務や経理処理は苦手で、独立の時は最初から入ってもらおうと決めていました」

中央会計は知人に紹介してもらったという。
「近い将来、FirstStepでの法人化も予定しています。人を増やすタイミングや他店の取り組みなどもアドバイスいただければと思っていましたが、実際にたくさんの役に立つアドバイスをいただけています」

下西氏が仕事に取り組む上で大切にしていることは、「一人ひとりのお客様に丁寧に対応すること」だという。
「勤務していたある美容室では、1日で20組のカットを担当したことも。当時はお客様の顔を覚えることすら困難でした。しかも自分が逆の立場だったら、また来たいと思わないですよね……。だからこそ、今は無理に予約を詰め込まず、ひとりのお客様にゆとりを持って対応できる時間を確保するようにしています」

ひとりのお客様の時間を十分に確保することで、多くのメリットが生まれた。
「お客様一人ひとりに満足していただけるのはもちろんですが、私も楽しく仕事ができるようになりました。『本当にこの仕事をやっていて良かった』と思うことも増えましたね」

人を大切にする気持ちが、人のつながりを生んでいく

美容師が独立をめざすなら、独立前に何をしておくべきかうかがうと「技術よりも『人』を大切にすることが重要です」と下西氏。
「技術は高くて当たり前で、それ以上に『人』が大切。お客様はもちろん自分をサポートしてくれる業者さんも含め、一人ひとりを大事にしていく気持ちが人のつながりを生んでいく。自分ひとりのお店でも、実は一人でやっているんじゃないことを肝に銘じる必要があります」

加えて「苦手なことは人に任せる勇気と準備が必要」とも。
「私も含めた多くの美容師が、経営やお金の管理には疎いと思います。苦手なことに時間を費やすよりも、お金は掛かりますが人に頼って任せる方が絶対にうまくいく。任せるのに必要な費用も含めた上で準備すれば良いだけですから」

最後に今後の展開について話をうかがった。
「働く環境の整備は起業の目的でもあるので、しっかり実現していきたい。福利厚生や働きに見合った給与を支払う仕組みを整備し、向上心のある美容師がずっと安心して働ける環境を作りたいんです。もちろんそれが売上にもつながるはずです。お客様とスタッフを増やし、3年以内の実現をめざします」