美容室経営で起業

「根拠のない自信」に、「根拠」が伴って起業を決意

心斎橋にある美容室『アセンブラージュ』を運営する株式会社アセンブラージュ。代表取締役の塩月幸治氏は経営者でもあると同時に、現役のスタイリストでもある。現在、24年以上の歴史を積み重ねているアセンブラージュは、ヘアのみならずエステやマッサージ、ネイル、まつげパーマなど、女性の美しさをワンストップで提供するサロンとして、現在も進化し続けている。
「美容師になったのは、高校生の頃に25日周期で美容室に通っていたのがきっかけ。実は大好きな女性スタイリストさんに会うために通っていたのですが、なぜかオーナーさんは美容師の仕事に興味があると思ったみたいで、『うちの美容室でアルバイトしたら？』と誘われたんです（笑）」

これまで以上にお姉さんに会えると喜んでアルバイトを始めた塩月氏は、そこで美容師に不可欠なある才能を発揮することに。
「休日や長期休暇中にアルバイトしていたのですが、多くのお客様とお話することが本当に楽しかった。しかもオーナーからは『塩月くん、美容師に向いてるよ』と褒められて。もうこれは美容師になるしかないと」

そこですぐに大学進学をやめて美容専門学校への進学を決め、美容師をめざして学ぶうちに「自分は美容師として成功できる」という根拠のない自信が芽生えたという。専門学校卒業後は22歳でスタイリストに、25歳の頃にはお客様の数も増え、27歳で独立して『アセンブラージュ』をオープンさせた。
「25歳頃には、指名してくださるお客様が店内トップクラスになり『根拠のない自信』に根拠が伴ってきたんです。『独立しても大丈夫だ』という自信が確信に変わり、起業を決意しました」

「返事・あいさつ・時間を守る」は人間的成長に必須の要素

アセンブラージュをオープンさせてから25年近く、ずっと同じ税理士に依頼していたという塩月氏。
「ずっとお願いしていた税理士の方がご高齢になり、加えてアシスタントとしてサポートしてくれていた方が退職されることになって。そこで税理士の方と相談の上で、『では心機一転、新しい方にお願いしてみよう』ということになりました。新たに依頼する税理士事務所を中央会計さんに決めたのは、信頼できる先輩からの紹介だったからです」

オーナースタイリストとして、今も美容師の第一線で活躍し続ける塩月氏が大切にしていること、それは『返事・あいさつ・時間を守る』の3つ。
「この3つは良き美容師である前に、良き人間に成長するために必須の要素。これができないことには、良い美容師どころか、まともな人間と認められることすらありません。より良い人間へと成長することをめざせば、おのずと良い美容師になるはずです。技術はあって当然ですがね」

アセンブラージュではスタッフの教育に力を注いでいる。「良き美容師である前に、良き社会人たれ」を教育方針として掲げており、まず最初に『返事・あいさつ・時間を守る』を徹底して教え込むという。
「教育とは『共育』。社員教育に力を入れることで、私自身もまだまだ成長できると考えています」

「お客様にどうやって喜んでいただくか」がすべての基準となる

大阪・心斎橋を拠点に美容業界で20年以上活躍する塩月氏に、これから起業しようとする人へのアドバイスをお願いすると「自分自身の強みをしっかりと把握しておくことが大切だと思います」との言葉。
「私自身の強みは会話力。自分で『技術は一流、しゃべりは超一流』なんてキャッチフレーズを付けています（笑）。でも本当に、美容師としての技術的には自分より上手な人ってたくさんいますからね。その中で『お客様にどうやって喜んでいただくか』を突き詰めて考え、自分の特徴を出しつつ持てる技術を生かしてきた。だからこそ、今の自分があるのだと思います」

加えて、失敗も成功への大切なプロセスだという。
「長年美容室経営をしていると、起業時の気持ちや想いって忘れがちになるんです。私もそうでした。でも、そうした失敗も次のステップへの糧になる。こうしたら失敗するという教訓を得られたなら、それは成功と同じですからね」

最後に今後の展開について聞くと、「起業した2つの理由を今後も実践していきたい」と。ひとつは「自分が思う良い美容師を育てたい」という想い、もうひとつは「自分が思う理想の環境を作りたい」という想い。
「美容業界の金八先生になって、これからもスタッフを育て続けていくとともに、育てるにふさわしい店内空間、労働環境を整備していきたい。休みも増やし、スタッフがよりクリエイティブに働ける環境を創造していきます」