オーナー美容師として美容室経営で起業

『自分の城』を持つべく独立開業を決断

近鉄大阪線弥刀駅のすぐ近くにある『R-cubic』はこの地で約17年にわたって営業を続けるヘアサロンで、オーナーは有限会社ベアクロウの代表取締役でもある池田信也氏。26歳で独立して以来、34年にわたってサロン経営者であると同時に、第一線で活躍するスタイリストでもある池田氏が美容師をめざしたのは高校生の時。
「勉強で一番になれないのなら、いつかやってみたいと思っていた商売の世界にいち早く入って一番をめざそうと考えたんです。でも高校生だから、その時に頭に浮かんだ『自分でできる商売』が美容師、理容師、料理人ぐらいで。その中では『女性相手に仕事できるから楽しそう』という、なんとも高校生らしい理由で美容師をめざすことにしたんです（笑）」

高校卒業後に美容専門学校で学んだあと、美容室で働きはじめた。
「スタッフとして働いたのは4年間で、最後は大型店の店長をしていました。独立したきっかけは二つあります。当時、後輩美容師だった今の妻と結婚するために、早く独立して自分の城を持とうと考えたこと。もうひとつは、独立すれば自分の収入が増えると考えたんです」

独立して最初の店舗は、34年前に東大阪市内の大蓮にオープンし、現在も池田氏の奥様が店長として活躍する人気店となっている。その後、2店舗目としてオープンしたのが、現在の『R-cubic』の移転前の店舗で、17年前に現在の場所にヘアサロン『R-cubic』として移転オープンした。
「当時は若く、今みたいに独立に関する情報も多くなかったので、若さ故の勢いで独立した部分もありますね。もし当時の自分にアドバイスができるなら、全力で独立を止めるかもしれません（笑）」

地域密着型店舗だからこそ、お客様の信頼が第一

有限会社として法人化してすでに14期。中央会計とのお付き合いは個人事業主時代に遡る。
「まだ1店舗だけの頃、将来的に2店舗目を出すことも考えていたので、早い段階からお金の管理をきちんとしておかないと成長できないと考えました。それで、個人事業主の時から確定申告をプロの税理士にお任せすることにしたんです。中央会計を知ったのはネット検索。以来18年のお付き合いになりますが、お金に関すること以外にもさまざまなことを相談させてもらっています」

美容師としてはもちろんのこと、経営者としても30年以上のキャリアを誇る池田氏。仕事に取り組む上で大切にしていることはやはり『信頼』だという。
「『R-cubic』は東大阪市の地域密着型美容室で、お客様は近隣に住んでおられる方が多い。そうなると信用や信頼が最も大切になります。また『冠婚葬祭には必ず顔を出すこと』といった店舗経営のノウハウを教えてくれたのもお客様。店とお客様がお互いに助け合い、寄り添いあいながら時と信頼を積み重ねていくのは、地域密着型店舗の特徴なのかもしれませんね」

なんと、開業以来34年間お付き合いが続いているお客様もいるという。
「30年以上お付き合いが続くと、嘘なんてつけません。たとえ嘘をついても、すぐに見透かされてしまいますから（笑）」

独立には未来に想いを馳せる心が必要

独立して30年以上美容室経営に携わる池田氏に、これから起業しようとする人へのアドバイスをお願いすると、「もし美容師として独立したいなら、未来に想いを馳せてほしい」という答えが。
「若い頃に知り合った美容師仲間のうち、今も美容の仕事に携わっているのはおそらく1割に満たないかもしれない。そういう意味では厳しい業界です」

目先の家賃や『実家に近い』という理由だけで、独立する店舗の場所を決めてはいけない、と池田氏。
「長きにわたって美容師の仕事を続けていきたいなら、現在の状況だけではなく、将来の人口構成なども考慮して立地エリアを選んでほしい。エリアの未来に想いを馳せることが、独立成功の秘訣のひとつだと思います」

最後に、今後の展開について話をうかがった。
「近いうちに、福祉車両を購入してお客様の送迎を始める予定です。弥刀駅周辺は高齢化が進んでおり、『お客様に来てもらう』から『お客様を迎えに行く』スタイルへの変化が必要です。訪問美容という手法もありますが『非日常な時間を楽しんでいただく』という意味では、店舗に来ていただくことが不可欠だと思っています」

さらに、事業承継も視野に入れている。
「現在はまだ別の店に勤務していますが、次男と三男が美容師なんです。いずれは店や会社を引き継いでもらいたい。お客様にご迷惑を掛けないよう、徐々に事業承継も進めていきたいと考えています」