空間デザインとアンティーク雑貨店で起業

美容師から建築士へキャリアチェンジ

大阪市営地下鉄・江坂駅の近くにある『CLUTCH』はアンティーク雑貨店であると同時に、空間デザインや設計施工を行うデザイン事務所だ。雑貨店は、代表の渡辺剛志氏がアメリカに渡って直接買い付けてくるアンティーク雑貨が並ぶ。また、空間デザイン事務所としては、デザインから施工監理までワンストップで担当する。渡辺氏自身が美容師だったこともあり、美容室の内装の依頼が多いという。
「美容専門学校を出て、美容室でスタイリストとして働いていました。しかし、専門学校の仲間が東京や大阪の超大手サロンや有名サロンで働く様子を知るにつけ、同じように華やかな場所で働きたいのにアクションする勇気が出ず、悶々とした日々を過ごしていたんです。ある時、そんな考え方の自分自身に失望し、美容師の仕事を辞めて実家の設備工事会社で働く決意をしました」

住宅設備工事を営む父の会社を手伝い始めてみると、とても楽しかったという。だが、一つだけどうしても気に入らないことがあった。
「現場で着る作業着がカッコ悪く見えて、作業着を着て仕事するのがすごく気に入らなくて…。もっとカッコ良く仕事をするにはどうすれば良いか考え、思いついたのが建築士資格の取得だったんです」

夜間の専門学校に通って二級建築士の資格を取得したものの、資格取得後約2年間は設備工事の仕事を手伝いながら独学で勉強を重ねることに。すると専門学校時代の友人から「独立するので内装を頼みたい」という依頼が舞い込んだ。
「最初は自信がなくて断ろうと考えましたが、周囲のアドバイスもあってお手伝いすることにしました。すると、完成してすぐに別の友人が独立する美容室の内装を依頼してくれたんです。さらにその様子をSNSで発信していると、今度は雑貨店のお客さまが『自宅の改装をお願いしたい』と依頼してくださって。そんな感じで数珠つなぎのような感じで仕事が増えていきました」

2019年に入って依頼が増えたので家業の手伝いを終了し、個人事業主として『CLUTCH』を立ち上げた。

「こだわりきる」ことができるように自信を持つ

元美容師らしく、お客さまと美容師両方の動線を考え抜いた内装デザインが好評な渡辺氏。中央会計との出会いは周囲の人々の『評判』がきっかけとなった。
「家業の設備工事会社とは別の税理士に頼みたいと思っていました。そんな話を周囲にすると『うちの税理士は良いよ』と言う人が何人かいたんですよ。よくよく聞いてみると、その良い税理士というのがみんな中央会計のことだったんです（笑）。複数の顧客から異口同音に『良い税理士』と言ってもらえる中央会計ってすごく頼りになるんだと思い、依頼してみようと考えました」

ビジネスに取り組む上で大切にしていることを聞くと、「こだわりきること」という答えが返ってきた。
「こだわりきることは、私にとって非常に大切なこと。自分の提案や施工に自信を持つためにも、こだわるべき部分はこだわりきらねばなりません。そのためにも提案力を磨き続け、自分自身が納得できるものを作り続けたい。そうしないと、次の仕事でこだわりきれなくなりますからね」

人と違う方向をめざせば、同じ方向をめざす人と出会える

続いて、これから起業を考える人たちへのアドバイスをお願いした。
「空間デザインだからこう、営業だからこう、といった一般的なあるべき論の考え方ではなく、基本を理解した上で『好きなこと』や『やりたいこと』を優先するべき。『自分らしさ』を出して尖っていかないと、なかなか生き残れません」

さらに、「らしさ」を出し続けていれば、それに共感する人が必ず集まってくるという。
「私自身『人と違う方向に行こう』としているつもりです。でもそれを突き詰めていくと、同じ考え方の人が集まってくるんですよ。矛盾しているようですが、本当にそうなるから不思議です（笑）」

独立起業を考えるなら、人と違うことをやるべきだ、と渡辺氏。
「ちょっと『こんなことしても大丈夫かなぁ』と思うぐらい尖っても良いと思います。もちろん基本を十分に理解した上でのことですが。自分がやりたいことを突き詰めてやらないと、独立してまでやる意味がなくなってしまいます」

最後に今後の展開についてうかがった。
「今、本当に仕事が楽しくて。まずはこの状態をキープし続けたいですね。そして、一人ひとりのお客さまとしっかり向き合いながら、一歩先のステージをめざしていきたいです」